はじめに:サービスの値段は、あなたの“覚悟”の値段
こんにちは。 『からだ職の「まったり」未来設計ラボ』のTatsuです。 2025年8月6日。今日も、あなたは目の前のお客様や生徒様と、真摯に向き合っていることと思います。
素晴らしいセッションが終わり、お客様が心からの笑顔で「先生、本当に楽になりました!」と言ってくれた、あの瞬間。 理学療法士として、的確なアプローチができた時。ヨガインストラクターとして、クラス全体が美しい一体感に包まれた、シャバーサナの後。パーソナルトレーナーとして、クライアントが自己ベストを更新した、歓喜の瞬間。 私たち「からだ職」にとって、最高の喜びであり、報酬ですよね。
しかし、その直後に訪れる「お会計」の瞬間。 あなたは、どんな気持ちになりますか?
先ほどまでの温かく、神聖でさえあった空気が、少しだけ、ビジネスライクな、冷たいものに変わるような感覚。 お客様の「ありがとう」という、心からの感謝の言葉に対して、「〇〇円です」と、値段を口にする時の、あの、ほんの少しの罪悪感と、引け目。 まるで、崇高な「癒し手」である自分と、生々しい「商人」である自分という、二人の人格が、心の中でせめぎ合っているような、居心地の悪さ。
もし、あなたがこの感覚に少しでも心当たりがあるなら。 大丈夫。あなたは、一人ではありません。 それは、独立開業という、誠実な道を歩む、ほとんどすべての整体師やピラティスインストラクターが、一度は経験する、共通の痛みです。
僕自身の告白:60分5000円で心をすり減らした、僕の“安売り地獄”
僕自身、その痛みに、長年苦しめられてきました。 柔道整復師という国家資格はあっても、自費の世界ではただの新人。開業当初の僕は、自分の価値に、全く自信が持てませんでした。 「高いと思われたら、お客様が来てくれないかもしれない…」 その恐怖から、僕は、近隣の相場の最安値帯である「60分5000円」という価格を設定しました。 それは、僕の自信のなさが、そのまま値札になったような値段でした。
結果、どうなったか。 確かに、お客様の「数」は、少しずつ増えていきました。 しかし、その多くは、僕の技術や哲学ではなく、「安さ」という価値基準で、僕を選んだ方々でした。 予約の変更やキャンセルは多く、僕が心を込めて行うカウンセリングや、生活習慣へのアドバイスに、真剣に耳を傾けてくれる人は、多くありませんでした。
僕は、来る日も来る日も、ただただ、時間を切り売りし続けました。 そして、気づけば、僕の心は、すっかり擦り切れていました。 「これだけ、毎日、身を粉にして働いているのに、なぜ、利益はほとんど残らないんだ」 「なぜ、僕の想いは、伝わらないんだ」 ついには、お客様に対して、プロとして絶対にあってはならないはずの「不満」や「憤り」さえ、心の奥底で感じ始めるようになっていたのです。
その時、僕は、痛いほど理解しました。 僕が設定した「安い価格」は、お客様への「優しさ」ではありませんでした。 それは、僕自身の価値を、僕自身が貶め、僕の魂を、少しずつ安売りしていく、自殺行為だったのです。 そして、その安売りは、お客様から「本気で自分の身体と向き合う」という、大切な機会さえも、奪っていたのかもしれません。
この記事が、あなたの「価格」への恐怖を、「自信」と「誇り」に変える
この長い、そして少しばかり恥ずかしい告白から、僕があなたに最初に伝えたいこと。 それは、価格設定とは、単なる計算や、マーケティングのテクニックではない、ということです。
価格設定とは、あなたが、
「私は、これだけの価値を提供できる、プロフェッショナルです」
「私は、この仕事に、人生を懸ける覚悟があります」
と、社会に対して、あなた自身の言葉で、力強く宣言する、最も神聖で、最も重要な「自己表現」なのです。
この記事は、あなたの「価格」に対する、冷たく、重いイメージを、根本から覆します。 そして、あなたが、あなた自身の素晴らしい価値に、絶対的な自信と誇りを持ち、お客様に心から感謝されながら、正当な対価を、堂々といただけるようになる。 そのための、具体的な「哲学」と「技術」を、あなたに約束します。
さあ、あなたの価値に、ふさわしい値段をつけるための、静かで、しかし、エキサイティングな旅を、始めましょう。
第一章:価格設定の“3つの罠”―なぜ、あののサロンは儲からないのか―
序章で、僕は「値段とは、あなたの“覚悟”の値段だ」とお話ししました。 しかし、独立したばかりの私たちは、その「覚悟」を決めるための、正しい「物差し」を持っていません。 その結果、ほとんどの人が、これからお話しする3つの、致命的な「罠」のいずれかに、必ずハマってしまいます。
罠①:「コスト積み上げ式」の限界
「まず、毎月の家賃と経費を計算して…それを営業日数で割って、一人当たりのコストを出して…そこに、自分の生活費と、少しの利益を乗せれば、価格が決まる」
一見、これは非常に論理的で、ビジネスライクな、正しい価格の決め方のように思えます。 しかし、この「コスト積み上げ式」には、あなたのビジネスの可能性を、永遠に縛り付けてしまう、大きな限界が潜んでいます。
なぜなら、この計算式の中には、最も重要な要素が、完全に抜け落ちているからです。 それは、「あなたが、お客様に提供する“価値”」です。
考えてみてください。 お客様は、あなたのサロンの家賃がいくらか、光熱費がいくらか、などということには、1ミリも興味がありません。 お客様が、その身銭を切ってでも手に入れたいのは、「あなたの専門性によってもたらされる、人生の変化」です。
理学療法士としてのあなたの、深い医学的知識。 整体師としてのあなたの、繊細な手の感覚。 ヨガインストラクターとしてのあなたの、心と身体を繋ぐ智慧。 それらの「価値」は、あなたの経費とは、全く関係のない次元に存在します。
この方式で価格を決めてしまうと、あなたは永遠に、「コスト」という呪縛から逃れられません。 もし、あなたが努力して、より家賃の安い物件に移転したら?この計算式に従えば、あなたは値下げをしなければならなくなります。おかしいですよね。 「コスト積み上げ式」は、あなたの起業を、ただの「赤字にならないための作業」に貶めてしまう、危険な思考法なのです。
罠②:「競合追随式」という名の、消耗戦
次に、ほとんどの開業者が陥るのが、この罠です。
「近所の、あの人気店の整体院が、60分6000円だから、うちは、少しだけ安く5800円にしよう」
「あのピラティススタジオが、入会金無料キャンペーンをやっているから、うちもやらないと…」
これは、一見すると、市場を理解した、最も安全で、賢明な戦略のように思えます。 しかし、断言します。 「競合追随式」こそが、あなたを、利益も、誇りも、情熱さえも失わせる、「安売り地獄」への、直通列車なのです。
なぜなら、ライバルの価格を基準にした瞬間、あなたは、お客様に対して、こう宣言しているのと同じだからです。 「私のサービスは、あのお店と、基本的には同じです。少しだけ、安いですが」と。
あなたは、あなた自身の「独自性(USP)」を、自らの手で放棄してしまっているのです。 そうなれば、お客様があなたを選ぶ理由は、「安さ」以外になくなります。 そして、その先にあるのは、100円、200円を削り合う、血みどろの「価格競争」という、勝者のいない、不毛な消耗戦です。
僕の経験談: 近所に、僕より安い大手サロンが出店した時、僕はパニックになり、本気で値下げを考えました。 しかし、その時、僕の師である一人の経営者が、こう言ってくれたのです。 「Tatsu君、君は、牛丼屋と、三ツ星レストランと、どちらになりたいんだ?」と。 牛丼屋は、安さと速さで、不特定多数のお客様に価値を提供します。 三ツ星レストランは、圧倒的な価値と体験で、それらを求める、特定のお客様に、最高の満足を提供します。 どちらも素晴らしいビジネスですが、戦う土俵が、全く違う。
あなたの「価格」は、あなたが、どんなお客様と、どんな関係を築きたいか、という「意思表明」なのです。 ライバルの価格を追いかけることは、あなたの船の舵を、他人に預けてしまう、最も愚かな行為です。
罠③:「自信のなさ」が反映された、お伺い価格
そして、最後のこの罠が、最も根深く、私たちの心を蝕んでいきます。
「本当は、1セッション1万円はいただきたい。でも、そんな高い値段を言って、お客様に断られたら、どうしよう…」
「このくらいの値段なら、お客様も文句は言わないだろう…」
この、恐怖から生まれた「お伺い価格」。 これは、あなたのビジネスの土台を、静かに、しかし確実に、腐らせていきます。
なぜなら、あなたの「自信のなさ」は、言葉以上に、お客様に伝わってしまうからです。 あなたが、あなた自身の価値を、心の底から信じていなければ、お客様が、あなたの価値を信じてくれるはずがありません。 「この先生、なんだか自信がなさそうだな…」 その感覚は、お客様の満足度を下げ、リピートへの道を閉ざしてしまいます。
そして何より、この罠は、あなた自身の心を、最も傷つけます。 序章でお話しした、僕の「60分5000円」の安売り地獄。 あれは、まさにこの「自信のなさ」から生まれた、お伺い価格でした。 その価格で働き続けることは、「自分は、その程度の価値しかない人間だ」と、毎日、自分自身に言い聞かせているのと同じでした。それは、ゆっくりとした、精神的な自殺行為だったのです。
コスト、競合、自信のなさ。 この3つの罠から抜け出し、あなたの「価値」に基づいた、揺るぎない価格設定をすること。 それが、あなたの独立開業という旅路を、苦しいだけの消耗戦から、誇りと、喜びに満ちた、豊かなものへと変える、最初の、そして、最も重要なステップなのです。
次の章では、いよいよ、その具体的な「価値」の見つけ方と、値段への“翻訳”の方法について、お話ししていきます。
第二章:新しい物差し。「価値」で値段を決める、という革命
第一章で、私たちは、多くの独立開業者が陥る、価格設定の「3つの罠」について学びました。 コスト、競合、そして自信のなさ。 それらは全て、あなたを「安売り地獄」へと誘う、古い、そして壊れた物差しです。
では、私たちが、これから手にすべき、新しくて、正確で、そして、あなたの心を豊かにしてくれる「物差し」とは、一体何なのでしょうか。 その答えは、たった一つの言葉に集約されます。 それが、「価値」です。
この章では、あなたのサービスの本当の「価値」を見つけ出し、それを、自信を持って「価格」へと“翻訳”するための、具体的な思考の旅に出ましょう。
「時間」を売るのを、今すぐやめよう
まず、あなたが最初に手放すべき、最も根深い思い込み。 それは、「自分は、時間を売っている」という考え方です。
「60分 〇〇円」「90分 △△円」 この価格設定は、時給で働くアルバイトや、工場で働く時間労働者のものです。 独立したあなたは、もはや、誰かに時間を管理される「労働者」ではありません。 お客様の未来を創造する、誇り高き「経営者」であり、「専門家」です。
僕の気づき: 僕も昔は、自分の価値を「60分」という時間でしか測れませんでした。 しかし、ある時、気づいたのです。 お客様が、僕の60分に支払ってくれる対価は、僕の「労働時間」に対してではありません。 僕が、柔道整復師として、ロルファー™として、RYT500ヨガ講師として、これまでの人生で費やしてきた、何万時間という学びと、臨床経験。その、凝縮されたエッセンスに対して、支払ってくれているのだと。
あなたの価値は、たった60分という時間では、決して測れません。 その呪縛から、今すぐ、自由になりましょう。
お客様が本当に買っているのは、あなたの“技術”ではなく、“理想の未来”
では、「時間」でないとしたら、お客様は、一体、何にお金を払ってくれているのでしょうか。 それは、あなたの“技術”そのものでもありません。
お客様が本当に買っているのは、あなたの技術によってもたらされる、「理想の未来」なのです。
この、マーケティングにおける、最も重要な真理を、私たちの仕事に当てはめてみましょう。
- 理学療法士のあなたは、「徒手療法」という技術を売っているのではありません。 あなたが売っているのは、「退院後も、杖なしで、もう一度、孫と公園を散歩できる、喜びの未来」です。
- 整体師のあなたは、「骨盤矯正」という技術を売っているのではありません。 あなたが売っているのは、「産後、履けなくなったお気に入りのジーンズを、もう一度、自信を持って履きこなせる、輝く未来」です。
- ヨガインストラクターのあなたは、「ヨガのポーズ」を売っているのではありません。 あなたが売っているのは、「情報過多の、ストレスフルな毎日の中に、心からの平穏と、自分自身を取り戻す、静かな未来」です。
- ピラティスインストラクターのあなたは、「リフォーマーのセッション」を売っているのではありません。 あなたが売っているのは、「痛みのない、しなやかな背骨を手に入れ、仕事のパフォーマンスを最大化できる、エネルギッシュな未来」です。
- パーソナルトレーナーのあなたは、「筋力トレーニング」を売っているのではありません。 あなたが売っているのは、「子供の運動会で、一番カッコいいパパ・ママになれる、誇らしい未来」です。
あなたの仕事の価値は、お客様の人生を、どれだけ豊かに、そして輝かせることができるか。 その「変化の大きさ」で、決まるのです。
あなたの「価値」を計算する、魔法の公式
では、その目に見えない「価値」を、どうやって、具体的な価格へと落とし込んでいけば良いのでしょうか。 そのために、あなたのサービスが提供する価値を、3つの種類に分解して考えてみましょう。
3-3-1. 機能的価値(お客様の、身体的な“悩み”を解決する価値)
これが、最も分かりやすい価値です。「痛みが消える」「痩せる」「姿勢が良くなる」「柔軟性が高まる」。 これは、お客様があなたの元を訪れる、直接的な動機であり、いわば「土台」となる価値です。
3-3-2. 情緒的価値(お客様の、“心”を豊かにする価値)
ここからが、その他大勢との「差別化」が生まれる、非常に重要な価値です。 あなたのセッションを通して、お客様は、どんな「感情」を手に入れますか? 「長年の痛みから解放される、圧倒的な安心感」 「自分の身体が変わっていく、ワクワクするような高揚感」 「誰にも言えなかった悩みを、この先生は分かってくれる、という信頼感」 「日常の喧騒から離れ、心からリラックスできる、深い癒し」
僕の経験談: 僕の「まったり経営」という哲学は、この「情緒的価値」を、意図的に高める戦略でもあります。僕自身が心穏やかでいることで、その安心感がお客様にも伝わり、「ここに来ると、身体だけでなく、心も軽くなる」という、唯一無二の価値を生み出しているのです。
3-3-3. 自己表現価値(お客様が、“理想の自分”になる価値)
そして、これが、お客様をあなたの熱狂的な「ファン」に変える、最も高次元の価値です。 あなたのサービスを継続することで、お客様は、どんな“新しい自分”になりますか? 「自分の健康に、意識的に時間とお金を投資できる、素敵な私」 「美と健康の、高い意識を持つ仲間たちと繋がれる、新しいコミュニティの一員である私」 特に、ヨガやピラティスのスタジオでは、この「自己表現価値(コミュニティへの所属感)」が、非常に大きな価値を持ちます。
【ワークショップ】あなたのサービスの「本当の価値」を言語化する
さあ、あなた自身の価値を、掘り起こしてみましょう。 ノートを開いて、あなたの“理想のお客様”の顔を思い浮かべながら、以下の質問に、答えてみてください。
- 私のサービスを受けたお客様は、どんな「機能的な変化」を遂げますか?
(例:慢性的な腰痛が、3ヶ月後には、ほぼ気にならなくなる) - その変化の過程で、お客様はどんな「感情的な喜び」を感じますか?
(例:「もう治らない」という諦めが、「私、まだ変われるんだ」という希望に変わる) - 私のサービスを継続することで、お客様は、どんな“新しい自分”になりますか?
(例:痛みに支配される人生から、自分の身体を、自分でコントロールできる、自信に満ちた人生を送る人になる) - 【最終質問】これらの価値を統合して、私のサービスの“本当の価値”を、一つの物語として語ってください。
(例:「私の仕事は、単なる腰痛改善ではありません。お客様が、痛みを理由に諦めていた、人生の“やりたいこと”を取り戻し、もう一度、自分の人生の主役として輝くための、伴走をすることです」)
この最後の答えこそが、あなたが、お客様に、そして、あなた自身に、自信と誇りを持って提示すべき、あなたのサービスの「本当の価値」なのです。 この価値を基準にすれば、あなたの価格は、もう、決して揺らぐことはありません。
第三章:価値を伝える「サービス・価格設定」―あなたの“覚悟”を決める技術―
第二章で、私たちは、自分の本当の「価値」を見つけ出しました。 しかし、どれほど素晴らしい価値も、それがお客様に伝わり、喜んで対価を支払っていただける「商品」という形になっていなければ、ビジネスは成立しません。
この章では、あなたのその素晴らしい「価値」を、具体的な「サービスメニュー」と「価格表」へと落とし込み、安売り競争から完全に抜け出すための、具体的な戦略と技術について、徹底的に解説していきます。
利益を最大化する「フロントエンド・バックエンド」戦略入門
独立したばかりの理学療法士や整体師が、最初にぶつかる壁。 それは、「まだ実績もないのに、いきなり高単価なサービスを提案するのは、怖い…」という、恐怖心です。 その恐怖を、見事に解消してくれるのが、この「フロントエンド・バックエンド」という、マーケティングの基本戦略です。
信頼の入り口を作る「フロントエンド商品」の設計法
フロントエンド商品とは、あなたのことをまだ知らない未来のお客様が、低価格・低リスクで、あなたの価値を「お試し」できる、集客のための商品です。 高級レストランの、お得な「ランチコース」をイメージしてください。
- 目的: ここで利益を出す必要は一切ありません。目的はただ一つ、お客様との間に「信頼関係」を築くことです。
- 価格設定のコツ: お客様が、「この値段なら、失敗してもいいかな」と、心理的な抵抗なく、気軽に参加できる価格に設定します。
- 具体例:
- 理学療法士/整体師: 「初回限定・根本原因分析カウンセリング+施術体験:60分‐4980円~8800円」
- ヨガ/ピラティスインストラクター: 「グループレッスン体験:1回500~1500円」
- ヨガ/ピラティスインストラクター: 「パーソナルレッスン体験:2980円~6600円」
- パーソナルトレーナー: 「カウンセリング+30分パーソナル体験:3980円~6600円」
利益の柱となる「バックエンド商品」への、美しい繋ぎ方
バックエンド商品とは、フロントエンド商品を体験し、あなたの価値と人柄に、絶大な信頼を寄せてくれたお客様にだけ、満を持して提案する、高単価で、高価値な、あなたの“本命”商品です。
この「繋ぎ方」こそが、あなたの腕の見せ所。決して、「売り込み」になってはいけません。
僕が実践している方法: 僕は、初回体験の最後に、お客様の身体の状態をまとめた「身体の設計図」のようなものをお渡ししながら、こう伝えます。 「今日、体験していただいた施術で、〇〇という変化が出ました。しかし、あなたの長年の悩みを、本当の意味で解決し、△△という理想の未来を手に入れるためには、最低でも3ヶ月、これくらいのペースで、こういうアプローチが必要です。そのための、あなただけの特別プログラムをご用意しましたが、いかがなさいますか?」
これは、「セールス」ではなく、お客様の未来を想う、専門家としての、誠実な「提案」です。
松竹梅メニュー(3段階価格設定)の、心理学的効果と作り方
バックエンド商品を提案する際に、非常に効果的なのが、この「松竹梅メニュー」です。 これは、お客様の満足度を高め、かつ、あなたの利益を最大化するための、心理学に基づいた価格戦略です。
「アンカリング効果」を利用して、本命商品を“安く”見せる
人間は、最初に提示された価格(アンカー)を基準に、その後の価格の「高い」「安い」を判断する、という心理的な特性があります。 最初に、最も高価な「松」コースを提示することで、あなたが本当に売りたい「竹」コースが、非常にお得で、合理的な選択肢に見えてくるのです。
【職種別】具体的な松竹梅メニュー事例
では、この戦略を、あなたのビジネスにどう落とし込むか。4つの具体的なモデルケースを見ていきましょう。
① 理学療法士、整体師(1対1の、根本改善モデル)
フロントエンド‐体験セッション:4000~8000円
【バックエンド商品】
特徴: お客様一人ひとりの身体と深く向き合い、痛みの根本原因を解消し、再発しない身体作りまでをサポートする、高単価・高価値モデル。
- 【梅】応急処置・単発コース
価格: 1回 15,000円
内容: 今ある、つらい痛みや不調を、まず緩和するための集中アプローチ。
ターゲット: 「まずは、この痛みを何とかしたい」という、緊急性の高いお客様。あるいは、継続コース後の、メンテナンスで訪れるお客様。 - 【竹】根本改善・標準コース(これが本命)
価格: 3ヶ月・全8回 112,000円(1回あたり14,000円)
内容: 詳細なカウンセリングと評価に基づき、痛みの根本原因を特定。施術計画を立て、二人三脚で、再発しない身体の「土台」を築き上げる、あなたの技術の核心となるコース。
ターゲット: 「もう、この痛みと縁を切りたい」と、本気で願うお客様。 - 【松】完全サポート・プレミアムコース
価格: 半年・全16回+オンライン生涯サポート付 240,000円
内容: 「竹」コースの内容に加え、食事や運動、生活習慣の改善までを、オンラインで期間無制限にサポート。あなたの持つ全ての知識を注ぎ込み、お客様の人生そのものを、より健康で豊かなものへと導く、最上級のパートナーシップ。
ターゲット: 最高の自己投資を求める、健康意識が極めて高いお客様。
② ヨガ・ピラティスインストラクター(グループレッスンモデル)
フロントエンド‐体験セッション:500~1500円
【バックエンド商品】
特徴: コミュニティの繋がりと、継続のしやすさを重視した、月額制(サブスクリプション)モデル
- 【梅】ドロップイン(都度利用)
価格: 1回 3,500円
内容: 気軽に、好きな時に、クラスに参加できる。
ターゲット: 初めての方、スケジュールが不規則な方、遠方から時々訪れる方。 - 【竹】レギュラー会員(これが本命)
価格: 月額 12,000円(月4回まで、もしくは週1回固定など)
内容: 定期的に通うことで、着実に心身の変化を感じられる、スタジオの基本となるプラン。
ターゲット: 生活の中に、ヨガやピラティスを習慣として取り入れたい、最も中心となるお客様層。 - 【松】プレミアム会員
価格: 月額 18,000円
内容: 全てのグループレッスンが「通い放題」。さらに、マットレンタル無料や、特別ワークショップへの優先参加権などの特典が付く。
ターゲット: 週に何度も通いたい、あなたのスタジオが大好きで、熱量の高い、ロイヤルなお客様。
③ ヨガ・ピラティスインストラクター(プライベートレッスンモデル)
フロントエンド‐体験セッション:3000~6000円
【バックエンド商品】
特徴: 一人ひとりの身体と目的に、完璧に寄り添う、オーダーメイドの高単価・高価値モデル。
- 【梅】初回体験プライベートセッション
価格: 1回 10,000円
内容: 詳細なカウンセリングと身体評価を通して、お客様の課題と可能性を明確にする、フロントエンドとしてのセッション。
ターゲット: グループレッスンでは満足できない、本気で身体を変えたいと願う、新規のお客様。 - 【竹】継続プライベートコース(これが本命)
価格: 月額 28,000円(月2回)
内容: お客様の目標達成に向けた、継続的なパーソナルプログラム。毎回のセッションで、身体の変化を共有し、微調整を加えながら、着実にゴールへと導く。
ターゲット: 特定の目標(姿勢改善、パフォーマンス向上など)を持つ、あなたのメインとなるお客様。 - 【松】人生を変える3ヶ月・集中プログラム
価格: 3ヶ月・全12回+食事・生活指導付 180,000円
内容: ピラティスやヨガのセッションに加え、食事や睡眠、マインドセットまで、あなたの持つ全ての知識を総動員し、お客様の人生を、3ヶ月で劇的に変えるための、最上級コンサルティング。
ターゲット: 結婚式や、特別な目標を控えた、最高の結果を求めるお客様。
④ パーソナルトレーナー(結果コミットモデル)
フロントエンド‐体験セッション:4000~8000円
【バックエンド商品】
特徴: お客様の「痩せたい」「筋肉をつけたい」という、明確な「結果」にコミットする、短期集中・高単価モデル。
- 【梅】パーソナル・単発セッション
価格: 1回 13,000円
内容: フォームのチェックや、トレーニングメニューの相談など、都度利用できるセッション。
ターゲット: すでにコースを終えたお客様の、メンテナンス利用が中心。 - 【竹】2ヶ月短期集中・ボディメイクコース(これが本命)
価格: 全16回・食事指導付 198,000円(1回あたり約12,400円)
内容: あなたのジムの、スタンダードとなる結果コミット型プログラム。科学的根拠に基づいたトレーニングと、日々の食事指導で、2ヶ月で、お客様の身体を劇的に変える。
ターゲット: 「夏までに痩せたい」「結婚式のために」といった、明確な目標を持つ、最も多いお客様層。 - 【松】年間パーソナル契約・エグゼクティブプラン
価格: 月額80,000円(月4回セッション+24時間LINEサポート+整体コンディショニング付)
内容: 忙しい経営者や、高いレベルを維持したい方向けの、年間を通したトータルサポート。トレーニングだけでなく、僕が持つ整体や筋膜リリースの技術で、常に最高のコンディションを維持する。
ターゲット: 健康を、最高の自己投資と考える、経済的に余裕のあるお客様。
回数券と月額制(サブスクリプション)、どちらがあなたのビジネスに合うか?
お客様に継続していただくための、2つの代表的なモデル。それぞれのメリット・デメリットを理解し、あなたのコンセプトに合った方を選びましょう。
回数券のメリット・デメリット
メリット: まとまった金額を先にいただけるため、キャッシュフローが安定します。これは、開業初期の経営者にとって、非常に大きな精神安定剤になります。
デメリット: お客様の来店ペースが不規則になりがちです。また、「失効問題」(使い切れずに有効期限が切れる)は、お客様の不満に繋がりやすく、長期的な信頼関係を損なうリスクがあります。
月額制のメリット・デメリット
メリット: 毎月の収入が安定し、長期的な経営計画が立てやすくなります。お客様の来店も習慣化しやすく、より深い関係性を築けます。
デメリット: お客様にとっては「縛り」と感じられることもあり、導入のハードルが少し高くなります。また、毎月の決済を管理するシステムが必要です。
返金保証は、諸刃の剣。導入する際の、ただ一つの条件
「効果がなければ、全額返金します」 このオファーは、お客様の不安を取り除き、申し込み率を劇的に上げる、強力な武器になり得ます。 しかし、それは、あなたの首を絞める「諸刃の剣」にもなりかねません。
僕が考える、返金保証を導入するための、たった一つの条件。
それは、あなた自身が、あなたの提供する価値に、1ミリの揺ぎもない、絶対的な自信を持っていることです。
「万が一、返金を求められても、全く心が痛まない。なぜなら、私は、この価格以上の価値を、120%提供したと、胸を張って言えるからだ」
心の底から、そう思えるようになった時。 その時初めて、あなたは、この強力な武器を、手にする資格があるのです。 自信がない状態での返金保証は、ただの安売りと同じ、自分を傷つける行為でしかありません。
第四章:「値上げ」という、最も怖い、しかし最も重要な挑戦
あなたのサロン経営が軌道に乗り、予約が埋まり始め、しかし、同時に、あなたの心身がすり減っていくのを感じ始めた時。 あなたは、必ず、この「値上げ」という、避けては通れない壁の前に、立つことになります。
なぜ、僕たちは「値上げ」が、これほどまでに怖いのか?(お客様が離れる恐怖の正体)
この恐怖の正体を、まずは分解してみましょう。
- 拒絶される恐怖: 「高い」と思われ、大切なお客様が、静かに去っていくかもしれない。その、失恋にも似た、直接的な拒絶への恐怖。
- がめついと思われる恐怖: 特に、長年通ってくれている、loyalなお客様に対して、「お金儲けに走り始めた」と、思われてしまうのではないか。その、信頼を裏切るかのような、罪悪感。
- 対立への恐怖: 値上げを伝えた時の、お客様の、あの、気まずい表情や、沈黙。その、直接的な対立の場面を、想像するだけで、足がすくむ。
- 自信のなさ(インポスター症-候群): そして、最も根深いのが、これです。「今の自分は、本当に、新しい価格に見合う価値を、提供できているのだろうか?」という、自分自身への、揺らぎと疑い。
これらの恐怖は、人の役に立ちたいと願う、心優しき理学療法士やヨガインストラクターであるあなたほど、強く、そして大きく、のしかかってくるのです。
僕の失敗談:初めての値上げで、お客様が半分になった日。僕が犯した、たった一つの過ち
僕も、開業して2年が経ち、予約が常に満杯になった時、最初の値上げを決意しました。 しかし、当時の僕は、その恐怖に、完全に負けていました。
お客様に、直接、顔を見て伝えるのが怖かった僕は、ただ、待合室に、一枚の小さな紙を貼り出しただけでした。 「〇月〇日より、料金を改定いたします。旧価格〇〇円→新価格△△円」 そこには、感謝の言葉も、値上げの理由も、未来への約束も、何も書かれていませんでした。 それは、ただの、冷たい、一方的な「通知」でした。
結果、どうなったか。 翌月、僕の予約表から、長年通ってくれていたお客様の名前が、半分、消えました。 誰からも、文句は言われませんでした。彼らはただ、黙って、僕の元から去っていったのです。 僕は、売上だけでなく、大切なお客様との、時間をかけて築き上げてきたはずの「信頼」をも、失ってしまったのです。
僕が犯した、たった一つの、しかし致命的な過ち。 それは、「お客様への、敬意と、説明責任」を、完全に怠ってしまったことでした。
失敗から学んだ、お客様が「ありがとう」と言ってくれる「値上げの伝え方」
その痛い失敗から、僕は、値上げが「単なる価格の変更」ではなく、「お客様との、新しい関係性を築くための、極めて重要なコミュニケーション」なのだと学びました。 お客様が、不満ではなく、むしろ「応援します!」と、笑顔で言ってくれる、魔法のような「伝え方」のステップを紹介します。
【値上げを伝える、5つのステップ】
- タイミング: 遅くとも、2〜3ヶ月前には、告知を始めましょう。突然の通知は、不信感しか生みません。
- 伝え方: 必ず、一人ひとりのお客様に、直接、あなたの口から伝えてください。貼り紙や、一斉送信メールだけで済ませるのは、最悪の選択です。
- 感謝と共に「なぜ」を伝える: これが、最も重要です。「申し訳ありませんが…」と、謝罪から入ってはいけません。感謝から始めるのです。
- 付加価値を示す: 値上げによって生まれたリソースで、あなたが、お客様に、これからどんな、より良い価値を提供できるのかを、具体的に示します。
- 既存のお客様への、特別な配慮: 長年あなたを支えてくれたお客様への、感謝の気持ちを、形として示します。
【例文テンプレート:お会計の際に、直接伝える場合】
「〇〇さん、いつも本当にありがとうございます。おかげさまで、当サロンも、来月で〇周年を迎えることができます。 そこで、〇〇さんへの感謝の気持ちを込めて、一つ、大切なご報告があります。
実は、来々月(〇月)から、料金を、現在の〇〇円から、△△円へと改定させていただくことになりました。
というのも、今後、私がさらに深く□□という技術(例:筋膜リリース)を学び、より質の高いサービスを提供していくために、そして、予約が取りにくい状況を改善し、お一人おひとりにもっと集中できる環境を作るために、この決断をいたしました。
もちろん、〇〇さんのように、これまで私を支えてくださった皆様には、感謝の気持ちとして、年内(あるいは、お持ちの回数券が終わるまで)は、現在の料金のままで、ご利用いただけます。
これからも、いただいた料金以上の価値を、必ずお返しすることをお約束しますので、今後とも、どうぞよろしくお願いいたします」
値上げの、ベストなタイミングとは?
値上げは、いつでもしていいわけではありません。GOサインとなる、5つの条件があります。
- 予約が、常に8割以上、埋まっている
- 新規の問い合わせが、コンスタントにある
- お客様からの、熱量の高い「感謝の声(口コミ)」が、十分に集まっている
- あなたが、新しい技術の習得や、設備投資など、明確な「自己投資」をした後
- そして何より、あなた自身が、「私の価値は、今の価格以上だ」と、心の底から、確信できた時
値上げは、既存のお客様への「裏切り」ではなく「より良い未来への、約束」である
最後に、あなたの心にある、最も大きな罪悪感を、解き放ちましょう。 値上げは、お客様への「裏切り」ではありません。 それは、「私は、これからも、プロとして成長し続け、あなたに、最高の価値を提供し続けます」という、お客様の未来への、力強い「約束」なのです。
そして、それは同時に、あなた自身と、あなたの家族への、「私は、自分の心と身体を大切にし、この素晴らしい仕事を、持続可能な形で、一生涯続けていきます」という、大切な約束でもあります。
燃え尽きてしまったトレーナーやヨガインストラクターは、もう、誰も救うことはできません。 だからこそ、あなたの価値に見合った価格を、自信と、誇りを持って、提示してください。 それこそが、プロフェッショナルとしての、本当の「誠実さ」なのです。
終章:あなたの価値に、自信と誇りを
ここまで、本当に長い、そして、時には耳の痛い話もあったかもしれません。 価格設定の「罠」、価値の「定義」、具体的な「戦略」、そして「値上げ」という名の恐怖。 この長い旅路にお付き合いいただき、本当にありがとうございます。
最後に、僕がこのラボで、価格というテーマを通して、あなたに本当に伝えたかった、たった一つのことについて、お話しさせてください。
価格設定とは、自分自身との対話である
あなたは、これまで、価格とは「お客様が決めるもの」「市場が決めるもの」だと思っていたかもしれません。 しかし、もう、あなたはその考え方から自由になりました。
あなたの価格は、あなたが、あなた自身の価値を、どれだけ信じているかを映し出す“鏡”です。
その鏡に映る数字が、もし、今のあなたにとって、低すぎると感じるなら。 それは、お客様が悪いのでも、競合が悪いのでもありません。 それは、あなた自身が、まだ、自分の本当の価値に、気づけていない、というサインなのです。
「私には、10年間の臨床経験がある」
「私は、〇〇という、誰にも負けない専門技術を持っている」
「私は、お客様の人生を、本気で変えたいと願っている」
その、揺るぎない事実と、尊い想い。 それらを、一つひとつ、丁寧に拾い集め、自信を持って、鏡に映る数字へと、反映させてあげてください。 価格設定とは、市場調査である前に、あなた自身との、深く、そして誠実な「対話」なのです。
あなたの「覚悟」が、お客様の「覚悟」を引き出す
僕の経験談: 僕が、60分5000円という「自信のない価格」で働いていた頃。 僕の元には、不思議なほど、「自分の身体と、本気で向き合う覚悟のない」お客様が集まってきました。 遅刻や、無断キャンセルも、少なくありませんでした。
しかし、僕が、自分の提供価値を信じ、勇気を出して、価格を2倍以上に引き上げた時。 お客様の数は、一時的に減りました。 しかし、僕の元に残ってくれた、そして、新しく訪れてくれたお客様は、全員が、ご自身の身体に対して、僕と同じくらい、真剣な「覚悟」を持った方々でした。
あなたの価格は、フィルターです。 あなたが自信を持って提示する、覚悟のこもった価格は、お客様に「本気で、自分の身体と向き合おう」という、覚悟を促します。 そして、そのようにして集まった、覚悟のあるお客様とのセッションは、驚くほどの相乗効果を生み、あなたの臨床家としてのレベルを、さらに引き上げてくれるのです。
安い価格は、お客様の「覚悟」を奪います。
適正な価格は、お客様の「覚悟」を、引き出すのです。
このラボが、あなたの“価値”を信じ続ける、伴走者でありたい理由
独立開業という道は、孤独です。 時には、お客様から厳しい言葉をいただくこともあるでしょう。 時には、売上が上がらず、自分の価値を、自分自身で見失いそうになる夜もあるはずです。
そんな時、どうか、このラボに帰ってきてください。 ここは、あなたが、あなた自身の価値を、見失いそうになった時に、いつでも「あなたは、これほどまでに、素晴らしい価値を持っている」と、伝え続ける場所です。
僕たちは、あなたの起業という旅路の、そして、あなたの人生そのものの、あなたの価値を、誰よりも信じ続ける、伴走者でありたいと、心から願っています。
最後まで長い文章を読んでくださり、ありがとうございました^^
ーTatsu