はじめに:「腕はいいのに、なぜかお金が残らない…」全ての独立開業者が抱える、静かなる悩み
こんにちは。 『からだ職の「まったり」未来設計ラボ』のTatsuです。
今日もあなたは、目の前のお客様や生徒様と、真摯に向き合っていることと思います。
素晴らしいセッションが終わり、お客様が心からの笑顔で「先生、本当に楽になりました!」と言ってくれた、あの瞬間。 理学療法士として、的確なアプローチができた時。整体師として、長年の痛みを解放できた時。ヨガやピラティスのインストラクターとして、クラス全体が美しい一体感に包まれた、シャバーサナの後。パーソナルトレーナーとして、クライアントが自己ベストを更新した、歓喜の瞬間。 私たち「からだ職」にとって、最高の喜びであり、報酬ですよね。
しかし、その日の夜、一人で静かに、今月の売上と経費を計算している時。 あなたの心に、ふと、こんな、冷たい疑問がよぎることはありませんか?
「あれ…?今月も、こんなに一生懸命働いたのに、なぜ、手元には、これだけしかお金が残らないんだろう…」
技術には、自信がある。
お客様からの評判も、決して悪くない。
誰よりも、真面目に、誠実に、この仕事と向き合っている、という自負もある。
なのに、なぜか、いつもお金の不安がつきまとう。
なぜか、心の平穏が、遠い。
その、誰にも言えない、言語化できない「なぜ?」という、静かなる悩み。 この記事は、その「なぜ?」の正体に、あなたと共に、メスを入れるためのものです。
1-2. 僕自身の告白:売上は過去最高、でも、僕の心と口座は“栄養失調”だった
かく言う僕も、独立開業してからの数年間、この「なぜ?」の沼に、どっぷりと浸かっていました。 特に、開業3年目の、ある月のことです。 僕は、ついに、開業以来の、過去最高の月商を達成しました。予約は常に満杯。傍から見れば、それは「成功」そのものだったでしょう。
しかし、その月の末日、僕は、全く笑えませんでした。 売上から、家賃、水道光熱費、高額なホームページのリース料、そして、学びのためのセミナー代を差し引いた時。 僕の銀行口座に残った「純利益」は、病院で働いていた頃の、手取り給料よりも、少なかったのです。
身体は、過労でボロボロ。
心は、プレッシャーで、すり減っている。
そして、口座は“栄養失調”。
僕は、愕然としました。 僕は、一体、何のために、独立したのだろうか、と。 この経験は、僕に、一つの残酷な真実を教えてくれました。 「忙しいこと」と「儲かっていること」は、全くの別物である。 そして、僕の経営は、見た目は健康そうに見えて、実は、深刻な“病”に侵されているのだ、と。
1-3. この記事の目的:あなたの経営の“病”を特定し、具体的な「処方箋」を渡す
この記事は、あなたの経営の「健康診断」です。 僕が、自らの痛みを伴う経験から特定した、利益が出ないサロンに共通する「5つの“病”」。 それらは、あなたの経営を、静かに、しかし確実に蝕んでいく「病原菌」です。
この記事を通して、あなたのサロンが、
- どの病に、
- どれくらい深く、
- なぜ、 侵されてしまっているのかを、冷静に、そして客観的に、一緒に診断していきましょう。
そして、ただ診断するだけではありません。 それぞれの病に対して、僕が実際に試して、効果があった、具体的な「処方箋」を、あなたにお渡しします。
この教科書を読み終える頃には、あなたは、自分のお店の「主治医」として、あなたの経営を、根本から「健康」で「豊か」な体質へと、変えていくための、確かな知識と、自信を手にしているはずです。 さあ、あなたの、大切な城の、健康診断を始めましょう。
第一章:【病①】経営アレルギー ―「職人」でいるだけで、「経営者」になっていない―
独立開業という、希望に満ちた道を歩み始めた、あなたへ。 この章では、まず、私たちの多くが、無自覚のうちに感染してしまっている、最も厄介な“病”について、お話ししたいと思います。 その病の名は、「経営アレルギー」です。
これは、技術は一流、想いも本物。しかし、経営というものに、なぜか強い抵抗感を感じてしまう、私たち心優しき「からだ職」特有の、アレルギー症状です。
2-1. 【症状チェックリスト】あなたは、いくつ当てはまる?
まず、あなた自身の「健康診断」から始めましょう。 以下の3つの症状に、あなたは、いくつ、心当たりがありますか?
- □ 自分の店の、先月の「純利益」を、1万円単位で即答できない。
誰かに「ビジネス、順調?」と聞かれた時、「おかげさまで、忙しくさせてもらっています」と、笑顔で答える。しかし、もし「で、先月、いくら利益が残ったの?」と突っ込まれたら、途端に言葉に詰まってしまう。 - □ 確定申告の時期になると、毎年、憂鬱になる。
1年の集大成であるはずの、確定申告。しかし、あなたにとっては、1年分の領収書の山と向き合う、苦痛で、憂鬱な「罰ゲーム」になっていないでしょうか。 - □ 「数字の話は、苦手だ」と、公言してしまっている。
「私は、感覚派だから」「数字よりも、お客様の笑顔が大切だから」。 その言葉を、あなたが、数字という現実から目を背けるための「言い訳」や「盾」として、使ってしまってはいないでしょうか。
もし、一つでも、心当たりがあったなら。 大丈夫。何も、恥じることはありません。 なぜなら、かつての僕は、この3つの項目すべてに、大きな花丸がついてしまうほどの、重度の「経営アレルギー」患者だったのですから。
2-2. 【根本原因】技術への“過信”と、数字への“アレルギー”
なぜ、私たちは、このアレルギーを発症してしまうのでしょうか。 その根本原因は、私たちの職業が持つ、素晴らしい「美徳」そのものに、皮肉にも隠されています。
それは、「良い施術さえしていれば、経営は後からついてくる」という、甘美で、危険な幻想です。
理学療法士として、医学的根拠に基づいた、正しいアプローチを提供すること。
整体師として、繊細な手の感覚で、お客様の痛みを取り除くこと。
ヨガ・ピラティスインストラクターとして、心と身体の調和へと、人々を導くこと。
パーソナルトレーナーとして、クライアントの目標達成に、全力で伴走すること。
その「職人」としての、純粋で、ひたむきな探求心。 それこそが、私たちの仕事の、最も尊い部分です。
しかし、その「技術への過信」が、私たちに、経営者として向き合うべき、もう一つの現実——つまり「数字」から、目を背けさせてしまうのです。 私たちは、無意識のうちに、こう思っています。 「数字は、冷たい」「利益を計算するのは、がめつい」「お金の話は、汚らわしい」と。 この「数字へのアレルギー」が、あなたの素晴らしい技術と情熱を、社会に届けるための「血流」を、静かに、しかし確実に、滞らせていくのです。
2-3. 【僕の失敗談】「どんぶり勘定」で、黒字倒産の危機に瀕した話
僕が、このアレルギーの恐ろしさを、身をもって知ったのは、開業して2年目のことでした。 その月、僕の店の売上は、過去最高を記録しました。予約は満杯。僕は、有頂天でした。「これで、俺も成功者の仲間入りだ」と。 月末、僕は、自分へのご褒美に、少しだけ、高いディナーを食べに行きました。
しかし、その数週間後。 僕の元に、税務署から、一枚の通知が届きました。 それは、消費税と、予定納税の、支払い通知。 そこに書かれていた金額を見て、僕は、血の気が引きました。 僕が「利益」だと思っていたお金の、ほとんどが、吹き飛んでしまうほどの、金額でした。
慌てて、僕は、初めて、自分の店の「経費」を、真剣に計算してみました。 家賃、水道光熱費、毎月参加していたセミナー代、高額だった治療機器のリース料…。 売上は、確かに過去最高でした。 しかし、それ以上に、経費も、過去最高にかさんでいたのです。
売上は上がっているのに、手元には、全く、お金が残らない。 これが、多くの個人事業主が陥る、「黒字倒産」という、最も恐ろしい病の、初期症状です。
あの時、僕は、心の底から、震えました。 自分の経営が、いかに「どんぶり勘定」で、いかに脆い土台の上に成り立っていたのかを、痛いほど、思い知らされたのです。
2-4. 【処方箋】会計ソフトを“相棒”にする。たった3つの数字だけを見る、超シンプル経営分析術
この「経営アレルギー」を克服するために、あなたが、分厚い会計の本を読む必要はありません。 必要なのは、たった一つの「処方箋」と、毎月、たった3つの「数字」と、向き合う習慣だけです。
処方箋:会計ソフトを、“相棒”にする
僕があなたに、まず、お勧めしたいこと。 それは、「マネーフォワード クラウド確定申告」や「freee」といった、クラウド会計ソフトを、今すぐ、導入することです。 これらは、難しい会計処理を自動化してくれる、ただの「ツール」ではありません。 あなたの経営状態を、24時間、文句も言わずに見守り、客観的なデータを示してくれる、最高の「相棒」なのです。
超シンプル経営分析術:見るべきは、たった3つの数字
そして、その相棒が示してくれる、たくさんの数字の中から、あなたが、まず、見るべき数字は、たったの3つです。
- 売上: これは、あなたが、その月、お客様からいただいた「ありがとうの総量」です。
- 固定費: これは、あなたのお店が、そこに存在するだけで、毎月、必ずかかる「家賃」のようなものです。(例:テナント料、ホームページのサーバー代、水道光熱費の基本料金など)
- 変動費: これは、お客様が増えれば増えるほど、一緒に増えていく「仕入れ」のようなものです。(例:施術で使うオイル代、タオルクリーニング代、クレジットカードの決済手数料など)
この3つの数字を、月に一度、ただ、眺めてみてください。 そして、「今月は、売上に対して、固定費の割合が、少し高かったな」「来月は、もう少し、変動費を抑える工夫をしてみようか」と、考える。 この、自分の経営を、客観的に「観察」する、静かな習慣こそが、あなたを、単なる「職人」から、自分の未来を、自分の手でコントロールできる、賢明な「経営者」へと、変えていくのです。
第二章:【病②】安売り依存症 ―価格ではなく「値段」で勝負している―
第一章で、私たちは「経営アレルギー」という病について学びました。 次にお話しする第二の病は、それと密接に関係しています。 それは、あなたの独立開業という、素晴らしい船出を、座礁させてしまう、恐ろしい病。 その名は、「安売り依存症」です。
これは、自分の価値を信じることができず、「安さ」という、刹那的な安心感に依存してしまう、心の病です。
3-1. 【症状チェックリスト】あなたの価格は、“恐怖”から生まれていないか?
まず、あなた自身の心を、正直に、見つめてみてください。 以下の3つの症状に、心当たりはありませんか?
- □ 近隣の競合店の値段ばかり、気にしてしまう。
自分のサービスの価格を決める時、真っ先に、Googleマップで近所のライバル店の値段を調べてしまう。そして、「あの店より、高くしてはいけない」という、見えないプレッシャーを感じている。 - □ お客様に料金を伝える時、少しだけ、声が小さくなる。
最高のセッションが終わり、お客様も笑顔。しかし、お会計の瞬間に、「〇〇円です」と口にする時、ほんの少しだけ、声が上ずったり、早口になったり、申し訳なさそうな気持ちになったりする。 - □ 「値上げ」という言葉を、考えただけで、怖い。
予約は埋まり、忙しい日々。しかし、利益は、思うように残らない。本当は「値上げ」をすべきだと分かっている。しかし、それを考えるだけで、お客様が離れていく恐怖が、心臓を鷲掴みにする。
もし、一つでも、深く頷いてしまったなら。 大丈夫。あなたは、一人ではありません。 僕も、かつては、この3つの症状全てを抱えた、重度の患者でした。
3-2. 【根本原因】自分の“価値”を、自分自身が、信じられていない
なぜ、私たちは、この「安売り」という、甘い麻薬に、手を出してしまうのでしょうか。 その根本原因は、たった一つです。 それは、「あなた自身が、あなたの提供する“価値”を、心の底から、信じられていない」からです。
あなたの価格は、あなたの「自信」の鏡です。 そして、安い価格は、無意識のうちに、あなた自身が、世界に対して、こう宣言してしまっているのです。
「私には、この程度の価値しかありません」と。
特に、私たち「からだ職」は、この罠に陥りやすい。 理学療法士として、病院という大きな組織の庇護のもとで働いてきた経験。 ヨガやピラティスのインストラクターとして、「癒し」や「精神性」を大切にするあまり、お金儲けを「汚いもの」と感じてしまう、純粋な心。 その、あなたの素晴らしい「謙虚さ」や「優しさ」が、独立開業という、厳しいビジネスの世界では、時として、あなたの首を絞める「弱さ」へと、変わってしまうのです。
3-3. 【僕の失敗談】60分5000円で心をすり減らし、お客様をも“不幸”にした話
僕が、この病の恐ろしさを、身をもって知ったのは、開業して間もない頃でした。 自信のなかった僕は、近隣の相場より安い「60分5000円」という価格でスタートしました。 「これなら、誰にも文句は言われないだろう」という、恐怖から生まれた値段でした。
その結果、どうなったか。 確かに、お客様の「数」は、少しずつ増えていきました。 しかし、その多くは、僕の技術や哲学ではなく、「安さ」という価値基準で、僕を選んだ方々でした。 平気で無断キャンセルをし、僕が心を込めて行う生活習慣へのアドバイスには、耳を傾けない。そして、「一回で、良くならなかった」と、簡単に去っていく。
僕は、来る日も来る日も、ただただ、時間を切り売りし続けました。 そして、気づけば、僕の心は、すっかり擦り切れていました。 「これだけ、毎日、身を粉にして働いているのに、なぜ、利益はほとんど残らないんだ」 「なぜ、僕の想いは、伝わらないんだ」 ついには、お客様に対して、プロとして絶対にあってはならないはずの「不満」や「憤り」さえ、心の奥底で感じ始めるようになっていたのです。
そして、ある日、僕は、もっと恐ろしい事実に気づいてしまいました。 僕の安売りは、僕自身を不幸にしていただけではなかった。 お客様をも、“不幸”にしていたのです。
なぜなら、僕の安い価格は、お客様に、無意識のうちに、こう伝えてしまっていたからです。 「この施術は、その程度の価値です」 「あなたは、その程度の投資で、変われるはずです」と。 それは、お客様が、「本気で、自分の身体と向き合う」という、大切な“覚悟”を、僕自身が、奪ってしまっていた、ということなのです。
僕の「優しさ」のつもりだった安売りは、僕の心と、お客様の未来を、両方とも、蝕んでいたのです。
3-4. 【処方箋】「価値」を基準にした、価格設定の全技術(フロントエンド・バックエンド、松竹梅)
この、長く、暗い「安売り地獄」から、僕を救い出してくれた、希望の光。 それが、「価値」を基準にした、価格設定の考え方でした。
この「処方箋」は、あまりにも重要で、深いテーマなので、このラボの、別の「教科書」で、1万文字を超えるボリュームで、詳細に解説しています。
ここでは、そのエッセンスだけを、お伝えします。 それは、あなたの価格設定のOSを、根本からアップデートする、3つの強力な概念です。
- 「価値」で値段を決める、という革命: 「時間」で売るのをやめ、あなたが提供する、お客様の「理想の未来」に、値段をつける。
- 「フロントエンド・バックエンド」戦略: 低価格な「初回体験(フロントエンド)」で、まず、お客様との信頼関係を築く。そして、その信頼してくれた方にだけ、あなたの本命である、高単価な「根本改善プログラム(バックエンド)」を、提案する。
- 「松竹梅メニュー」: 高単価なバックエンド商品を、3段階の価格帯で用意することで、お客様が、自らの意思で、あなたに最も利益をもたらしてくれる、真ん中の「竹」コースを選びたくなる、という心理学的なアプローチ。
これらの技術は、あなたが、罪悪感なく、お客様に感謝されながら、自信を持って、高い価格を提示することを可能にしてくれます。 そして、それこそが、この「安売り依存症」という、根深い病を、完治させるための、唯一の処方箋なのです。
第三章:【病③】新規顧客至上主義 ―穴の空いたバケツで集客している―
第一章、第二章で、あなたは「経営者」としての視点と、「価値」に基づいた価格設定の考え方を手に入れました。 しかし、どんなに素晴らしいサービスも、それを受け取ってくれるお客様がいなければ、始まりません。 そこで、私たちは「集客」という、新しいステージに進みます。
しかし、このステージには、多くの起業家がハマってしまう、深く、そして気づきにくい「沼」が、口を開けて待っています。 それが、「新規顧客至上主義」という名の、病です。
4-1. 【症状チェックリスト】あなたは、目の前の“宝物”を見過ごしていないか?
まず、あなた自身の「健康診断」から始めましょう。 以下の3つの症状に、心当たりはありませんか?
- □ 新規集客のための、SNS投稿や広告に、毎日、多くの時間を使っている。
あなたの1日のタスクリストは、「インスタ投稿」「ブログ更新」「チラシ作成」といった、「新しいお客様を見つける」ための行動で、埋め尽くされていませんか? - □ あなたのお店の「リピート率」を、正確な数字で、把握していない。
「先月、何人の新規のお客様が来て、そのうち、何人が、今月も予約してくれたか?」 この、あなたの経営の、最も重要な「健康指標」を、あなたは、即答できますか? - □ 一度来てくれたお客様への、定期的なフォローが、できていない。
お客様がお店のドアを出た瞬間、あなたとお客様の関係は、次の予約の日まで、途切れてしまっていませんか?
もし、一つでも、ドキッとしたなら。 大丈夫。僕も、かつては、この3つの症状全てを抱えた、重症患者でした。 あなたは、ただ、目の前にある「宝物」の価値に、まだ気づいていないだけなのです。
4-2. 【根本原因】マーケティングを「狩り」だと、勘違いしている
なぜ、私たちは、これほどまでに「新規顧客」という、新しい獲物を追い求めてしまうのでしょうか。 それは、私たちが、マーケティングの本質を、「狩猟」だと、勘違いしてしまっているからです。
「狩猟型」の集客とは、毎日、新しい獲物(新規顧客)を追い求め、草原を走り回り、矢を放ち続ける、という生き方です。 それは、スリリングで、獲物を仕留めた瞬間には、大きな達成感があるかもしれません。 しかし、その営みは、あまりにも、不安定で、そして、消耗します。 明日の獲物が、今日と同じように、見つかる保証は、どこにもないのですから。
しかし、僕があなたに提案したいのは、全く違う生き方です。 「農耕型」の集客。 それは、新しい獲物を追い求めるのではなく、あなたの目の前にある「畑(既存のお客様)」を、丁寧に、愛情を込めて、耕し、育てるという、生き方です。
種を蒔き(初回体験)、水をやり(日々のコミュニケーション)、雑草を取り除き(不安の解消)、太陽の光を注ぐ(価値の提供)。 そうして育てた畑は、一度実れば、毎年、安定して、あなたに豊かな恵みをもたらしてくれます。
私たち理学療法士やヨガインストラクターは、本来、狩人ではありません。 お客様の身体と、人生という畑を、長期的な視点で、共に耕していく「農耕民族」のはずです。 あなたのマーケティングも、そうあるべきだとは、思いませんか?
4-3. 【僕の失敗談】広告費100万円をかけて、リピートしないお客様ばかり集めてしまった話
僕は、この「農耕」の大切さに気づくまで、100万円以上のお金と、数えきれないほどの時間を、無駄な「狩り」に費やしてしまいました。
開業当初、焦っていた僕は、地域の有名なクーポンサイトに、大きな広告を掲載しました。 「初回限定!60分 8000円 → 2980円!」 その効果は、絶大でした。電話は鳴り止まず、僕の予約表は、一瞬で、新規のお客様で埋め尽くされたのです。 「やった!これで、僕の店も安泰だ!」と、僕は、本気で、そう思いました。
しかし、その喜びは、長くは続きませんでした。 彼らのほとんどが、二度と、僕の元へは、来てくれなかったのです。
なぜか? 答えは、シンプルでした。 彼らが求めていたのは、僕の技術や、哲学ではありませんでした。 彼らは、ただ、「2980円」という、その瞬間の「安さ」だけを、求めていたのです。 彼らは、僕のファンではなく、「割引のファン」だったのです。
僕は、大切な資金と、精神力を使い、僕のバケツを、リピートという形で、すぐに蒸発してしまう、「質の悪い水」で、満たしてしまっていたのです。
4-4. 【処方箋】リピート率80%超えを実現する。「信頼残高」を積み上げる、ファン化の仕組み
では、どうすれば、あなたのバケツの穴を塞ぎ、一度入れた水を、蒸発させずに、満たし続けることができるのか。 そのための処方箋は、お客様を、単なる「顧客」から、あなたのビジネスを支えてくれる、熱狂的な「ファン」へと育てる、具体的なコミュニケーション術です。
- 初回のセッションで、「未来」を体験させる
最初のセッションは、単なる「お試し」ではありません。お客様が、「この先生と一緒なら、私の未来は、変わるかもしれない」と、感動し、期待を抱くための、「予告編映画」なのです。あなたの持つ、最高の技術と、最高の知識を、惜しみなく、注ぎ込んでください。 - 「ゴールデンタイムの24時間」を、絶対に逃さない
お客様が、最も感動と熱量を維持している、初回来店から24時間以内。 このゴールデンタイムに、あなたからの一通の、パーソナルなメッセージが届くかどうかで、リピート率は、劇的に変わります。「〇〇様、本日はありがとうございました。その後、お身体の調子はいかがですか?お伝えしたセルフケア、もし分からなければ、いつでもLINEで聞いてくださいね」 この、たった一言の気遣いが、お客様の心を、鷲掴みにします。 - 「関係」を育む、定期的なコミュニケーション
次の予約まで、お客様を放置してはいけません。 月に一度でも構いません。LINEや、ニュースレターで、お客様の役に立つ、売り込みのない、純粋な健康情報を、届け続けてください。 あなたは、お客様にとって、「身体が痛くなった時に、行く場所」から、「日々の健康を、見守ってくれる、頼れるパートナー」へと、変わっていくのです。 - 次の「ステップ」を、明確に提示する
そして、お客様との信頼関係が十分に築けた時。 「〇〇さんの身体を、本当の意味で根本から変えるためには、次からは、このコースで、こういうアプローチをしていきませんか?」と、お客様の未来のための、次のステップを、自信を持って、提案するのです。
この、丁寧で、誠実な、一つひとつの積み重ねこそが、あなたのバケツの穴を、完璧に塞ぎ、あなたのビジネスを、決して枯れることのない、豊かな泉へと、変えてくれるのです。
第四章:【病④】労働集約モデル依存症 ―自分の「時間」だけを切り売りしている―
ここまで、あなたは経営者としての視点を手に入れ、価格を決め、お客様との信頼を築く方法を学びました。 その結果、あなたの予約表は、お客様の名前で、びっしりと埋まっているかもしれません。 おめでとうございます!しかし、同時に、危険な兆候に、気づいていませんか? それは、成功の果実のように見えて、実は、あなたの自由を、静かに奪っていく、第四の病。「労働集約モデル依存症」です。
5-1. 【症状チェックリスト】あなたの年収の“上限”が、見えてしまっていないか?
- □ あなたが休んだら、売上はゼロになる。
1週間の休暇を取ることを考えると、ワクワクする気持ちよりも先に、「〇〇円の売上を失う」という、冷たい計算をしていませんか? - □ 収入を増やすには、自分の労働時間を増やすしか、方法がない。
「もっと稼ぎたい」と思った時、あなたの頭に浮かぶ選択肢が、「朝の予約枠を、あと一つ増やす」「休日を、一日潰す」ということだけになっていませんか? - □ これ以上、予約枠を増やすことは、物理的に不可能だ。
あなたのスケジュールは、すでに満杯。あなたは、自分の時間の全てを、今のビジネスに捧げている。
もし、これらが、あなたの現実であるなら。 あなたは、成功への階段を順調に登っているように見えて、実は、「年収の天井」が、すぐそこに迫っている、非常に危険な状態なのです。
5-2. 【根本原因】「経営者」ではなく「自分の店の、一番忙しい従業員」になっている
なぜ、こんなことが起こるのでしょうか。 それは、あなたが、独立開業したはずなのに、その意識が、「自分の店の、一番忙しい“従業員”」のまま、止まってしまっているからです。
理学療法士や整体師として、目の前のお客様に、最高の施術を提供する。
ヨガやピラティスのインストラクターとして、最高のレッスンを提供する。
パーソナルトレーナーとして、最高のトレーニングを提供する。
その「プレイヤー」としての仕事に、あなたは、あまりにも誠実で、優秀すぎるのです。 しかし、「経営者」の本当の仕事は、プレイヤーとして、現場で汗を流すことだけではありません。 「自分が、現場にいなくても、お客様に価値が届き、収益が生まれる“仕組み”を作る」こと。 それこそが、経営者の、最も重要な仕事なのです。
5-3. 【僕の失敗談】予約満杯で燃え尽きた僕が、1日4時間労働に切り替えるまで
僕も、この罠に、どっぷりとハマっていました。 開業3年目、僕のサロンは、予約満杯の「成功」状態でした。 しかし、僕の心と身体は、疲弊のどん底でした。 朝から晩まで、お客様の身体を癒し続け、自分の身体は、悲鳴を上げている。 売上は最高潮。しかし、僕の人生の満足度は、最低でした。 僕は、自由を求めて起業したはずなのに、自分で作り出した「黄金の鳥かご」に、囚われていたのです。 その時、僕は、全てを失う覚悟で、働き方を180度変える、大きな実験に出ました。 1日の労働時間を、4時間に制限したのです。その結果、僕は、初めて「仕組み」について、本気で考えるようになりました。
5-4. 【処方箋】時間を“レバレッジ”する。施術以外の「収入の柱」の作り方
その答えが、「レバレッジ(てこの原理)」という考え方です。 あなたの「1」の労力で、「10」や「100」の価値を生み出す。 そのための、具体的な「収入の柱」の作り方を、いくつかご紹介します。
- オンライン講座: あなたの専門知識を、動画コンテンツにして販売する。一度作れば、あなたが寝ている間も、その講座は、世界中の生徒に、価値を届け続けてくれます。
- セミナー: あなたの技術を、他の専門家に教える。1対1の施術が「足し算」なら、1対多のセミナーは「掛け算」です。
- 物販: あなたが、心から良いと信じられる、セルフケアグッズや、健康食品を、お客様に紹介する。
- 電子書籍: あなたの哲学やノウハウを、一冊の本にまとめる。
これらの「仕組み」が、あなたを、単なる「時間労働者」から、本当の意味での「自由な経営者」へと、解放してくれるのです。
第五章:【病⑤】無計画航海シンドローム ―行き先のない船に乗っているあなたへ―
毎日、クライアントさんのために一生懸命になっている、心優しいあなたへ。
目の前の人の「楽になったよ、ありがとう」という言葉や笑顔が、何よりの原動力ですよね。朝早くから夜遅くまで、技術を磨き、知識を深め、一人ひとりに真摯に向き合う。その誠実で素晴らしい仕事ぶりに、心から敬意を表します。
でも、ふとした瞬間に、こんな気持ちになることはありませんか?
「毎日こんなに頑張っているのに、なぜか心が満たされない…」
「このままずっと、同じ働き方を続けていけるんだろうか…」
「私の人生、この先どうなっていくんだろう…」
まるで、広大な海の上で、エンジンの音は高らかに鳴り響いているのに、船がどの方角へ進んでいるのか分からない。そんな感覚。
私たちは、この状態を「無計画航海シンドローム」と名付けました。
これは、決してあなたが不真面目だからとか、情熱がないから起こるものではありません。むしろ逆です。あまりにも真面目で、誠実で、目の前のクライアントさんに全力を注いでいるからこそ、陥ってしまいがちな「病」なのです。
この章では、そんなあなたの心の霧を晴らし、あなただけの羅針盤を手に入れるための、温かい処方箋をお渡ししたいと思います。あなたの船の船長は、他の誰でもない、あなた自身なのですから。
6-1. 【症状チェックリスト】あなたは、自分の“1年後”を、具体的に語れるか?
少しだけ、あなたの心を覗いてみましょう。 慌てなくて大丈夫です。正直な気持ちで、以下の質問に心の中で答えてみてください。
- □ 1年後の今日、あなたはどんな働き方をしていますか?
(週に何日、1日に何人のクライアントさんを、どんな想いで迎えていますか?) - □ 1年後のあなたの収入は、今と比べてどうなっていますか?
(その増えた(あるいは調整した)収入で、何を実現していますか? 好きなものを買ったり、大切な人と旅行に行ったりしていますか?) - □ 1年後、あなたの周りには、どんなお客様が集まっていますか?
(あなたの理想とする、心から「この人の力になりたい」と思えるお客様に囲まれていますか?) - □ 1年後、あなたはどんな新しいスキルや知識を身につけて、自信を持って提供していますか?
(ずっと学びたかったあの手技、気になっていたあの資格は、どうなっていますか?) - □ 1年後、あなたのプライベートは、どんな時間を過ごしていますか?
(趣味の時間は取れていますか? 家族やパートナーと、穏やかな時間を過ごせていますか?) - □ 1年後、あなたの心と身体は、どんな状態ですか?
(心から笑えていますか? 朝、スッキリと目覚められていますか? 身体のどこかに不調を抱えていませんか?)
…いかがでしたか?
もし、これらの質問に、スラスラと、そしてワクワクしながら答えられたなら、素晴らしいことです。あなたの航海は、順調そのものです。
でも、もし少しでも「うっ…」と詰まってしまったり、具体的なイメージが湧かなかったりしたのであれば、それは大切なサインです。あなたの船が、「行き先を見失っているよ」と教えてくれているのかもしれません。
でも、どうか自分を責めないでくださいね。なぜ、そうなってしまうのか。それには、とても明確な理由があるのです。
6-2. 【根本原因】日々の“作業”に追われ、「未来設計」の時間を取っていない
あなたは毎日、本当に多くのことをこなしています。
朝は予約の確認と準備から始まり、日中は途切れることのないセッションやレッスン。その合間には、カルテの記入、お客様への連絡、SNSでの発信、タオルやウェアの洗濯、そして掃除。夜は、明日の準備や、最新の知識を得るための勉強…。
これらは全て、クライアントさんのためを想う、尊い“作業”です。一つひとつが、あなたのサービスの質を支える大切な要素です。
しかし、私たちは知らず知らずのうちに、この日々の“作業”という名の「目の前の波」を乗りこなすことに必死になってしまいます。次から次へとやってくる波に対応しているうちに、ふと顔を上げると、自分がどこに向かっているのか分からなくなってしまう。自分が持っているはずの「羅針盤」や「海図」を見る時間さえ、忘れてしまうのです。
これが、「無計画航海シンドローム」の根本原因です。
あなたの船は、高性能なエンジン(あなたのスキルや情熱)を積んでいます。でも、「目的地」が設定されていなければ、ただガソリン(あなたの時間とエネルギー)を消費しながら、同じ場所をぐるぐると漂うことになってしまいます。
それは、燃え尽き症候群(バーンアウト)や、「何のために働いているんだろう」という虚しさの、一番の原因になりかねません。
私たちは、意識して「未来を設計する時間」…つまり、自分の船の羅針盤を確認し、目的地(港)を設定する時間を、取る必要があるのです。それは、日々の“作業”とは全く質の異なる、あなたの人生の舵取りそのものである、最も重要な“仕事”なのです。
6-3. 【僕の経験談】僕が、このラボで「未来設計」という言葉を、何度も使う理由
少しだけ、僕自身の話をさせてください。
今でこそ、こうして皆さんに「未来設計が大切ですよ」なんてお伝えしていますが、かつての僕は、まさに「無計画航海シンドローム」のど真ん中にいました。
独立した当初は、とにかく必死でした。「来てくださるお客様、一人ひとりを絶対に良くするんだ!」その一心で、朝から晩まで身を粉にして働きました。おかげさまで、口コミで評判が広がり、予約は常にいっぱいの状態に。収入も増え、周りからは「順調だね」と言われるようになりました。
でも、僕の心は、なぜかどんどん曇っていきました。 クタクタになって帰宅し、食事もそこそこにベッドに倒れ込む毎日。休日は、溜まった疲れを取るだけで精一杯。大好きだったはずの仕事が、いつしか「こなす」だけの“作業”に変わっていました。
ある雨の日の夜、最後のクライアントさんを見送った後、誰もいない静かなスタジオで、僕は一人、椅子に座り込んでしまいました。窓の外の雨音を聞きながら、ふと涙がこぼれたんです。
「俺は、何のために、こんなにボロボロになってるんだろう…?」
その時、僕の船は、豪華客船のように見えたかもしれないけれど、完全に「行き先のない船」でした。嵐が来たら、簡単に転覆してしまいそうな、脆い船でした。
その経験があったからこそ、僕は「未来設計」の重要性を痛感したのです。
ある尊敬する先輩経営者に相談した時、こう言われました。
「君の情熱や技術は本物だ。でも、君自身の『理想の未来』を描けていないんじゃないか? 目的地がなければ、どんなに素晴らしい船も、ただの漂流船だよ」
その言葉に、頭をガツンと殴られたような衝撃を受けました。 僕はその日から、意識して「自分の未来」を考える時間を作りました。最初は、何をどう考えていいか分からなかったけれど、「3年後、どんな働き方と暮らしをしていたら、心の底から幸せだと感じられるだろう?」と、自分に問いかけ続けることから始めました。
そして、僕なりの「目的地」…例えば、「週休2.5日を実現し、家族と夕食を囲む時間を大切にする」「アスリートのパフォーマンスアップに特化した、専門性の高いスタジオにする」といった具体的な未来像を描いたのです。
すると、信じられないことが起きました。
今まで「やらなければいけない」と思っていた日々の“作業”が、すべて、その目的地に繋がる「意味のある航路」に見えてきたのです。
- どの勉強会に参加すべきか? → 「アスリート専門」という目的地に最短で着けるものを選ぼう。
- どんな情報発信をすべきか? → 未来のお客様であるアスリートに響く内容にしよう。
- 料金設定はどうすべきか? → 専門性を高めるための自己投資と、理想の働き方を実現するために、自信を持ってこの価格を提示しよう。
「目的地」を描いたことで、日々の選択に一切の迷いがなくなりました。一つひとつの行動が、未来の自分への投資に変わったのです。航海は、力強く、そして確かなものになりました。不安や虚しさが消え、代わりにワクワクするような情熱が、再び心の内に灯ったのです。
だからこそ、僕はあなたにも伝えたい。
「未来設計」は、あなたの素晴らしい才能と情熱を、正しく、そして力強く未来へと導いてくれる、最強の羅針盤になる、と。
6-4. 【処方箋】あなただけの「理想の未来」を描く、シンプルなワーク
さあ、今度はあなたの番です。 あなただけの、最高の航海図を描いていきましょう。
これは、難しい自己分析ではありません。誰かに評価されるテストでもありません。あなたの心を解き放ち、「こうなったら最高!」とワクワクするための、楽しい時間です。
【準備するもの】
- 30分〜1時間、誰にも邪魔されない静かな時間
- お気に入りのノートとペン (PCやスマホでも構いませんが、手で書くと思考が整理されやすいですよ)
- ホッと一息つける、好きな飲み物(コーヒー、ハーブティーなど)
準備はいいですか? リラックスして、深呼吸を一つ。それでは、魔法の質問を始めます。
シンプルな質問リスト
「できるかどうか」は、一旦、宇宙の彼方に放り投げてください。「こうなったら、最高に幸せ!」という視点で、自由に、そして具体的に書き出してみましょう。
《STEP 1:1年後のあなた》
【働き方】
- 1年後の今日、あなたはどんなお客様に囲まれて、どんな言葉をかけられていますか?(例:「先生のおかげで、諦めていた趣味を再開できました!」)
- 理想の1日のスケジュールを、時間を書き込みながら教えてください。(例:7時起床、9時〜12時セッション、12時〜14時休憩、14時〜17時セッション、18時には帰宅)
- 理想の週のスケジュールは?(例:週4日勤務、水・日・祝は完全オフ)
- 年収は、いくらになっていますか? そのお金で、どんな素敵なことをしていますか?
【暮らし】
- 1年後、あなたは誰と、どんな笑顔で食卓を囲んでいますか?
- 自分のために、どんな時間を使っていますか?(例:週に1回は、大好きなカフェで読書する時間がある)
- 心と身体は、どんな状態ですか? 具体的な言葉で表現してみてください。(例:心が穏やかで、身体が軽やか。エネルギーに満ち溢れている)
《STEP 2:3年後のあなた》
【働き方】
- 3年後、あなたの専門家としての「肩書き」や「強み」はどうなっていますか?(例:「産前産後ケアの専門家として、地域で一番に名前が挙がる存在になっている」)
- 仕事の規模は、どうなっていますか?(例:一人でマイペースに? それとも、信頼できるスタッフを雇っている?)
- どんな仲間や同業者と、どんな関係を築いていますか?
- あなたの理想の「仕事場」は、どんな空間ですか?
【暮らし】
- 3年後、あなたはどこに住んでいますか? どんな家ですか?
- 年に何回くらい、どこへ旅行に行っていますか?
- あなたの人生を豊かにする「趣味」や「学び」に、どんな挑戦をしていますか?
- 大切な人たち(家族、パートナー、友人)を、どんな形で幸せにしていますか?
《STEP 3:5年後のあなた》
【働き方】
- 5年後、あなたは業界や地域社会に、どんな良い影響を与えていますか?(例:後進の育成に携わっている、地域の健康イベントを主催している)
- あなたの働き方は、さらにどう進化していますか?(例:現場の仕事は半分にして、オンラインでの講座や情報発信に力を入れている)
- あなたが働く「目的」は、どんな言葉で表現できますか?
【暮らし】
- 5年後、あなたは「お金」や「時間」と、どのように付き合っていますか?
- 振り返ってみて、「最高の5年間だった」と思えるとしたら、どんな経験を積み重ねてきましたか?
- あなたの人生における「理想のバランス」(仕事、家族、健康、趣味、学びなど)は、どんな円グラフで描けますか?
書き終えたら、ぜひ、そのノートを何度も見返してみてください。 できれば、毎日目にする場所に貼っておくのがおすすめです。
これが、あなたの「未来の海図」です。
この海図があれば、明日からの日々の“作業”が、未来に繋がる意味のある一歩へと変わっていくはずです。情報収集のアンテナの感度も、人との出会いの意味も、全てが変わって見えてきます。
もちろん、航海の途中で目的地が変わったり、新しい島(目標)を見つけたりしてもいいのです。大切なのは、「自分は今、どこを目指しているのか」を、自分自身が知っていること。
あなたの船の船長は、あなたです。 さあ、あなたの手で、希望に満ちた最高の航海図を描き、力強く、ワクワクするような未来へ向かって、船を進めていきましょう。
心から、あなたの航海を応援しています。
終章:あなたのサロンの“健康”と、“本当の豊かさ”のために
長い旅路を、ここまで共に歩んでくださり、本当に、本当にありがとうございます。
第一章から第五章まで、私たちはあなたの経営や働き方に潜む、5つの「病」について一緒に見つめてきました。もしかしたら、耳の痛い話もあったかもしれません。「これは、まさに私のことだ…」と、胸がチクリと痛んだ瞬間もあったかもしれません。
それでも、ご自身のサロンと真摯に向き合い、ここまで読み進めてくださったあなたのその姿勢こそが、誰にも真似できない、素晴らしい才能であり、未来を切り拓くための最初の、そして最も大きな一歩です。
この終章では、これまでの旅の締めくくりとして、あなたのサロン、そしてあなた自身の人生を、真に“健康”で“豊か”なものにしていくための、最後の、そして最も大切なメッセージをお届けしたいと思います。
7-1. 5つの病から、あなたのサロンを救い出す、最初のステップ
私たちは、これまでに5つの「病」を診断してきました。
- 【病①】安売りマインド ― 自分の価値を信じきれず、価格に自信が持てない病。
- 【病②】伝わらない専門性 ― 素晴らしい技術があるのに、それを言葉で伝えられない病。
- 【病③】自己流マーケティング ― 集客の地図を持たず、闇雲に努力してしまう病。
- 【病④】職人かたぎ ― 最高の職人でありながら、経営者としての視点を持てない病。
- 【病⑤】無計画航海シンドローム ― 行き先のない船に乗り、未来への不安を抱える病。
これらを見て、「うわぁ、自分はほとんど当てはまるかもしれない…」と、落ち込んでしまった方もいらっしゃるかもしれませんね。でも、どうか安心してください。これは、あなただけが特別に抱えている問題ではありません。多くの、真面目で、誠実で、心優しいセラピストやトレーナーたちが、同じように悩み、立ち止まってきた道なのです。
大切なのは、これらの病を自覚できた、ということです。それだけで、あなたのサロンは回復への道を歩み始めています。
では、これらの病から、あなたのサロンを救い出すために、まず何から始めればいいのでしょうか。全部を一度に治そうとしなくてもいいのでしょうか。
はい、もちろんです。 その、たった一つにして、最も重要な「最初のステップ」。
それは、「完璧を目指さず、たった一つでいいから、今すぐできそうなことから、小さく始めてみること」です。
なぜなら、あまりにも高い目標を掲げてしまうと、その道のりの長さに圧倒され、私たちは動けなくなってしまうからです。「あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ」と思っているうちに、結局何も手につかず、自己嫌悪に陥ってしまう…そんな経験、ありませんか?
そうではなくていいんです。 本当に、赤ちゃんの一歩(ベビーステップ)でいい。
例えば…
- もし「安売りマインド」が気になるなら、いきなり全メニューを値上げしなくていい。まずは、一番人気のメニューだけ、勇気を出して500円だけ上げてみる。それだけでいいんです。
- 「伝わらない専門性」に悩んでいるなら、完璧な説明文を考えなくていい。次のお客様に「今日は、〇〇という筋肉にアプローチして、△△な状態を目指しましょうね」と、一言だけ具体的に付け加えてみる。それだけでいいんです。
- 「無計画航海シンドローム」を感じているなら、壮大な事業計画書は要りません。今日の寝る前に、たった5分だけ、お気に入りのノートに「1年後、こんな自分でいられたら最高だな」と、思いつくままに書き出してみる。それだけでいいんです。
その「小さな一歩」が、驚くほどの力を秘めています。 小さな成功体験は、「私にもできるんだ!」という自信(自己効力感)を育ててくれます。その自信が、次の、もう少しだけ大きな一歩を踏み出す勇気を与えてくれます。
焦らなくて大丈夫。あなたのペースで、あなたにできることから。その小さな一歩の積み重ねが、やがて振り返った時に、とてつもなく大きな変化となって、あなたを驚かせることになるはずです。
7-2. 利益とは、健康的な経営の“結果”として、自然とついてくるもの
この連載を通して、「経営」や「利益」という言葉をたくさん使ってきました。もしかしたら、人の身体や心に寄り添う仕事をしているあなたにとって、「利益」という言葉には、少し抵抗があるかもしれません。「お金儲けがしたいわけじゃない」「クライアントさんに喜んでもらうのが一番だ」と。
その気持ちは、本当に尊く、素晴らしいものです。どうか、その想いをずっと大切にしてください。
その上で、少しだけ「利益」という言葉のイメージを、一緒に塗り替えてみませんか?
私たちが考える「利益」とは、単なるお金のことではありません。 それは、「あなたが提供した価値と、クライアントさんからの“ありがとう”という感謝の気持ちが、形になったもの」です。
そして、その利益は、あなたのサロンとあなた自身が、より良いサービスを提供し続けるために不可欠な“血液”のようなものなのです。血液がなければ、どんなに素晴らしい心臓(あなたの情熱)も、脳(あなたの知識)も、手足(あなたの技術)も、正常に機能し続けることはできません。
私たちが目指すべきは、「利益を追い求める経営」ではありません。 私たちが目指すべきは、「健康的な経営」です。
「健康的な経営」とは、以下の3つが満たされている状態です。
- あなた自身が、心身ともに“健康”であること。
(十分な休息、プライベートの充実、未来への希望) - クライアントが、あなたのサービスによって“健康”になっていること。
(悩みの解決、目標の達成、生活の質の向上) - サロンの経営(お金の流れ)が、“健康”であること。
(学びや設備への再投資、あなた自身の生活基盤の安定)
この3つの“健康”が、美しく循環し始めたとき、利益は、あなたが必死に追いかけなくても、“結果”として、ごく自然についてくるものに変わります。
あなたが心身ともに健康で、エネルギーに満ち溢れていれば、クライアントさんへ提供するサービスの質は自ずと高まります。質の高いサービスを受けたクライアントさんは、心から満足し、喜んでその対価を支払い、あなたのファンとしてリピートし、大切なご友人を紹介してくださるでしょう。そして、そこで生まれた健全な利益(血液)を、あなたは新たな学びやより良い環境づくりに再投資し、さらにサービスの質を高めていくことができる…。
この、どこにも無理がなく、関わる人すべてが幸せになる「健康の好循環」。 これこそが、私たちが考える“本当の豊かさ”です。
それは、通帳の数字が増えるだけの豊かさではありません。 クライアントからの深い信頼、仕事への揺ぎない誇り、自己成長を実感する喜び、そして、大切な人と過ごす自由な時間。そのすべてを含んだ、温かく、人間らしい豊かさなのです。
あなたのサロンが、そしてあなた自身の人生が、心からの笑顔と、本当の豊かさで満たされることを、心から願っています。
あなたの航海が、光り輝くものでありますように。
最後まで長い文章を読んでくださり、ありがとうございました^^
ーTatsu