はじめに:「治療は得意だが、事務は苦手…」全てのからだ職が抱える、見えない不安
こんにちは。 『からだ職の「まったり」未来設計ラボ』のTatsuです。
あなたの施術室や、スタジオ。 そこは、あなたの「聖域」ですよね。
お客様の身体と向き合っている時、あなたは、最高の専門家です。 理学療法士として、深い医学的知識で、痛みの根本原因を紐解く。 整体師として、繊細な手の感覚で、ミリ単位の歪みを、感じ取る。 ヨガやピラティスのインストラクターとして、呼吸と動きを通して、人の心と身体を、調和へと導く。 パーソナルトレーナーとして、クライアントの可能性を、誰よりも信じ、目標達成へと、伴走する。
その時間、あなたは、自信と、誇りと、そして、尽きることのない「やりがい」に、満ち溢れているはずです。
しかし。 その日の最後のセッションが終わり、一人、パソコンの前に座った瞬間。 あなたは、全くの別人になってしまってはいませんか?
「開業届」「青色申告」「経費」「所得控除」… 呪文のように並ぶ、専門用語の洪水。 見慣れない役所の書類を前に、思考は停止し、途方に暮れる。 「治療は得意だが、事務は、本当に苦手だ…」 その、誰にも言えない、静かな、しかし、深い「不安」。 それこそが、独立開業した、私たち「からだ職」の、ほとんど全員が抱える、共通の悩みです。
1-2. 僕自身の告白:無知が招いた、2年目の“住民税爆弾”という悪夢
かく言う僕も、開業当初は、この「お金のルール」から、完全に、目を背けていました。 「そんなことより、目の前のお客様を、良くすることの方が、100倍大切だ」と。 その考えは、半分は正しく、しかし、半分は、致命的に、間違っていました。
開業1年目、僕のビジネスは、順調でした。売上も、順調に伸びていました。 初めての確定申告も、会計ソフトの助けを借りて、なんとか乗り切りました。 僕は、少しだけ、天狗になっていたのです。「なんだ、経営って、意外と、何とかなるじゃないか」と。
しかし、悪夢は、2年目の6月に、突然、やってきました。 市役所から届いた、一通の、分厚い封筒。 その中に入っていたのは、「住民税」の納付書でした。 そこに書かれていた金額を見て、僕は、自分の目を疑いました。
数十万円。
僕が、その月、必死に働いて得られる利益の、ほとんどが、吹き飛んでしまうほどの、金額でした。 血の気が、引きました。「何かの、間違いじゃないのか?」と。 しかし、それは、間違いではありませんでした。
僕は、知らなかったのです。 住民税というものが、前年の所得を基準に計算され、1年遅れで、請求が来るという、その、あまりにも基本的なルールを。 開業1年目の、好調だった売上。それが、1年後、巨大な「時限爆弾」となって、僕の資金繰りを、直撃したのです。
この、無知が招いた「住民税爆弾」という恐怖の体験が、僕に、骨の髄まで、教えてくれました。 お金の知識は、あなたを縛る「鎖」ではない。 無知な、あなた自身を、理不尽な現実から守るための、「最強の盾」なのだ、と。
1-3. この教科書のゴール:税金と手続きを「恐怖」から、あなたの資産を守る「味方」へ変える
この記事は、あなたを、税理士のような、お金の専門家にするためのものではありません。 その必要は、全くないのです。
この記事の、たった一つのゴール。 それは、あなたが、独立開業した専門家として、自分の身を、そして、大切な資産を守るために、最低限、知っておくべき「お金のルール」と「知恵」の全てを、あなたに手渡すことです。
税金と、公的な手続き。 それらを、意味の分からない「恐怖」の対象から、あなたの起業という、素晴らしい旅路を、力強くサポートしてくれる、頼もしい「味方」へと、変えていきましょう。
第一部:【手続き編】あなたの“開業”を、社会に知らせる最初の一歩
序章で、僕が経験した「2年目の住民税爆弾」という、悪夢についてお話ししました。 あの悪夢は、僕が、独立開業する際に、最低限、知っておくべきだった「お金のルール」と「社会への手続き」を、完全に怠っていたことから、引き起こされました。
この第一部でお話しするのは、あなたの起業という、尊い挑戦を、社会の一員として、公に認められ、そして、無用なトラブルから、あなた自身を守るための、極めて重要な「最初の一歩」です。 少し、お堅い話に聞こえるかもしれませんが、大丈夫。 一つひとつ、丁寧に、進んでいきましょう。
2-1. 全ての始まり:「開業届」と「青色申告承認申請書」の提出
あなたが、理学療法士として、整体師として、あるいはヨガ・ピラティスインストラクター、パーソナルトレーナーとして、お客様から、初めて「1円」の対価をいただいた、その瞬間から。 あなたは、法律上、「個人事業主」となります。 そして、その「事業の開始」を、国(税務署)に知らせる、最初の挨拶状。 それが「開業届」です。
2-1-1. 開業届とは?(提出のタイミングと、書き方の全手順)
- これは何?: シンプルに言えば、「私、〇〇という名前で、△△という事業を、□月□日から、始めました!」という、あなたの「事業の出生届」のようなものです。
- いつまでに出すの?: 事業を開始した日から、原則として1ヶ月以内に、あなたの納税地を管轄する「税務署」に提出します。
- どうやって書くの?: 書き方は、驚くほど、簡単です。国税庁のサイトから様式をダウンロードし、あなたの名前、住所、屋号(お店の名前)、そして、事業の概要(例:「整体院の経営」「ヨガスタジオの運営」)などを、記入していくだけです。
2-1-2. 青色申告とは?(白色申告との決定的違いと、65万円控除という絶大なメリット)
そして、この「開業届」と、絶対に、セットで提出してほしいのが、「青色申告承認申請書」です。 確定申告には、「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。
- 白色申告: 帳簿付けが簡単。しかし、税金面でのメリットは、ほとんどありません。
- 青色申告: 少しだけ、帳簿付けが複雑になりますが、それを補って余りある、絶大な「節税メリット」があります。
その、最大のメリットが、「65万円の特別控除」です。 これは、あなたの年間の儲け(所得)から、無条件で、65万円を、差し引いてくれる、という、魔法のような制度です。 所得税率が20%の人なら、65万円 × 20% = 13万円。 毎年、これだけの税金が、安くなるのです。 この申請書を、出し忘れる、という、ただそれだけの理由で、あなたは、毎年、10万円以上のお金を、失い続けることになります。
2-1-3. 参考サイト:国税庁公式サイトと、分かりやすい解説ブログ
様式のダウンロードや、より詳細な書き方については、以下のサイトが、非常に参考になります。
- 国税庁公式サイト(開業届・青色申告): https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm
- 参考解説サイト(freee株式会社): https://www.freee.co.jp/kb/kb-kaigyou/step1/ (非常に分かりやすく、図解で解説されています)
2-2. 【職種別】保健所への届出は、本当に必要か?
税務署への届出と、もう一つ、あなたが確認すべきなのが、「保健所」への届出です。 これは、あなたの職種と、提供するサービス内容によって、必要かどうかが、変わってきます。
2-2-1. 理学療法士・柔道整復師が「整体院」として開業する場合の注意点
あなたが、理学療法士や柔道整復師といった国家資格者で、お客様の身体に触れるサービスを行う場合。たとえ、あなたが「整体院」と名乗っていても、そのサービス内容が、あん摩マッサージ指圧や、柔道整復と見なされる場合は、保健所への「施術所開設届」が必要になる可能性があります。
2-2-2. 整体師・カイロプラクターの場合
あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師以外の、いわゆる「民間資格」である整体師やカイロプラクターが、施術を行う場合、多くの場合、保健所への届出は「不要」とされています。
2-2-3. ヨガ・ピラティススタジオ、パーソナルジムの場合
ヨガやピラティスの指導、パーソナルトレーニングといった、運動指導を中心とするサービスの場合、原則として、保健所への届出は「不要」です。
2-2-4. 結論:迷ったら、まず、地域の保健所に電話で確認しよう
しかし、これらの判断は、最終的には、あなたの開業する地域の、保健所の見解に委ねられます。 インターネットの情報を、鵜呑みにするのは、非常に危険です。 僕からの、最も重要で、そして、誠実なアドバイスは、これです。
「必ず、あなたの地域の保健所に、事前に、電話で、確認してください」
「〇〇市で、△△という内容の、整体サロンを開きたいのですが、何か、届出は必要ですか?」 この、たった5分の電話一本が、あなたの未来の、大きなトラブルを防いでくれるのです。
この第一部で、あなたは、社会的な「存在証明」と、法的な「お守り」を手に入れました。 次の部では、いよいよ、あなたの経営の「血肉」となる、税金の基礎知識について、学んでいきましょう。
第二部:【税金の基礎編】そもそも、私たちは、何に、いくら払うのか?
第一部で、あなたは、開業に必要な「手続き」を学び、社会的なスタートラインに立ちました。 この第二部では、そのスタートラインに立った事業主として、社会に対して、どんな「責任(納税など)」を果たしていく必要があるのか、その全体像を見ていきましょう。
これは、難しい税金の勉強ではありません。 あなたの、大切な「夢」と「暮らし」を、これから先、何十年も、安定して守り続けるための、最も重要な「ルール」を学ぶ、楽しい時間です。
3-1. 売上と利益の、決定的な違い。あなたの“本当の儲け”を知る
まず、全ての土台となる、この公式を、あなたの心に刻み込んでください。
売上 ー 経費 = 所得(儲け)
- 売上: お客様からいただいた「ありがとうの引換券」の、1ヶ月の合計額です。
- 経費: その「ありがとう」をいただくために、あなたが使ったお金(家賃、勉強代、消耗品費など)です。
- 所得(儲け): 売上から、経費を差し引いた、あなたの「本当の儲け」です。
私たちが、これから支払っていく税金のほとんどは、この「所得(儲け)」に対して、課せられます。 売上が1000万円あっても、経費が900万円かかっていれば、あなたの「儲け」は100万円です。税金は、この100万円を基準に、計算されるのです。
3-2. あなたの所得(儲け)に課される、4種類の“税金”
では、具体的に、どんな税金を支払う必要があるのか。代表的な4種類を見ていきましょう。
3-2-1. 所得税:儲けに応じて税率が変わる「累進課税」の仕組み
これは、あなたの1年間(1月〜12月)の「所得」に対してかかる、国の税金です。 特徴は、「累進課税」、つまり、「儲ければ儲けるほど、税率が上がっていく」という階段式の仕組みです。
【所得税の税率(2025年8月現在・簡略版)】
- 195万円以下の所得:5%
- 195万円超〜330万円以下の所得:10%
- 330万円超〜695万円以下の所得:20%
…というように、所得が増えるにつれて、税率も上がっていきます。
3-2-2. 住民税:忘れた頃(2年目)にやってくる、高額な“爆弾”の正体
僕の最大の失敗談: 開業1年目、僕は順調に売上を伸ばし、利益も出ていました。「俺、結構いけてるじゃん!」と、少しだけ、天狗になっていました。 しかし、2年目の6月。市役所から、一枚の封筒が届きました。 そこに書かれていたのは、数十万円という、僕が全く想定していなかった「住民税」の納付書でした。 その金額に、血の気が引き、慌てて銀行に駆け込んだ、あの日の恐怖を、僕は、一生忘れません。
なぜ、こんなことが起こるのか。 それは、住民税が、前年の所得を基準に計算され、翌年に請求が来る「後払い」の税金だからです。 開業1年目は、その前年(会社員時代など)の所得が基準になるため、安く感じます。しかし、開業2年目には、あなたが1年目に稼いだ、その大きな所得に対する住民税が、時間差で、巨大な爆弾のように、やってくるのです。 税率は、所得に対して、おおよそ10%。この「爆弾」の存在を、絶対に、忘れないでください。
3-2-3. 消費税:年商1000万円を超えたら、あなたも“納税義務者”に
お客様から、料金と一緒に預かっている「消費税」。 2年前の売上(年商)が、1000万円を超えた場合、あなたも、その預かった消費税を、国に納める「課税事業者」になります。(2023年から始まった、インボイス制度も、これに深く関わってきます) 「売上」であり、「所得」ではない、という点が、重要なポイントです。
3-2-4. 個人事業税:特定の業種にかかる、もう一つの税金
これは、都道府県に納める税金で、法律で定められた70の業種にのみ、かかります。 私たち「からだ職」の場合、整体師、カイロプラクティックなどは、「医業に類する事業」として、課税対象となるケースが多いです。
一方で、理学療法士やヨガ・ピラティスインストラクター、パーソナルトレーナーは、多くの場合、対象外とされています。 ただし、これも、あなたのサービス内容や、自治体の判断によりますので、必ず、あなたの地域の「県税事務所」に、一度、確認することをお勧めします。
3-3. 避けては通れない、2つの“社会保険料”
税金とは別に、私たちが国民として支払う義務があるのが、「社会保険料」です。
3-3-1. 国民年金:あなたの老後を支える、基礎の基礎
会社員時代の「厚生年金」から、独立したあなたは「国民年金」に切り替わります。 これは、所得に関わらず、定額です(2025年度は、月額17,510円)。 あなたの、遠い未来の自分への、大切な「仕送り」です。
3-3-2. 国民健康保険:会社員時代との、保険料の計算方法の衝撃的な違い
これも、住民税と並んで、2年目にやってくる、大きな「衝撃」の一つです。 会社員時代は、保険料の半分を、会社が負担してくれていました。 しかし、独立開業したあなたは、全額、自己負担になります。 保険料は、前年の所得と、お住まいの自治体によって、大きく変わりますが、会社員時代の、おおよそ2倍近くになる、と覚悟しておくと良いでしょう。
ここまでで、あなたが、社会に対して支払うべき、お金の全体像が見えてきました。 「こんなに、たくさん払うのか…」と、少し、気が重くなったかもしれません。 大丈夫です。 次の第三部では、これらの責任を、きちんと果たした上で、あなたの手元に、より多くの「豊かさ」を残すための、賢い「節税」という名の、“知恵”について、お話ししていきます。
第三部:【節税の実践編】あなたの“資産”を守り、育てる知恵
第二部で、私たちは、独立開業した専門家として、どんな「税金」や「社会保険料」を支払う義務があるのか、その全体像を学びました。 「こんなに、たくさん払うのか…」と、少し、気が重くなったかもしれません。 大丈夫です。
この第三部では、その責任を、きちんと果たした上で、あなたの、汗と、涙の結晶である、大切な“利益”を、あなたの未来のために、最大限に守り、育てるための、具体的な「知恵」、すなわち「節税」について、徹底的に解説していきます。
4-1. 節税の基本思想:「利益を“隠す”」のではなく、「未来のために“賢く使う”」
まず、最も重要なマインドセットについて、お話しします。 「節税」とは、決して、売上を隠したり、不正をしたりする「脱税」とは、全く違います。 節税とは、法律で認められた権利を、正しく、そして賢く活用し、「未来のあなた」や「未来のあなたのビジネス」のために、お金を使うことで、結果として、今支払う税金を、最適化する、という、極めて知的な“経営戦略”なのです。 利益を「隠す」のではありません。未来のために、「賢く使う」のです。
4-2. 経費の計上:所得を“圧縮”する、最強の技術
4-2-1. そもそも「経費」とは何か?(節税の、最も基本的で、最も強力な武器)
経費とは、シンプルに言えば、「あなたの売上を上げるために、直接、必要だった費用」のことです。 思い出してください。税金は、売上 ー 経費 = 所得(儲け) の、「所得」にかかります。 つまり、認められる経費を、漏れなく、正しく計上すること。それこそが、所得を、適切に“圧縮”し、税金を最適化するための、最も基本的で、最も強力な武器なのです。
4-2-2. 【職種別】これは経費になる?ならない?ケーススタディ一覧表
4-2-2-1. 整体院・治療院で、特に注意すべき経費
施術で使うオイルやタオル、お客様用のお着替え、白衣やユニフォーム代はもちろん、お客様に身体の構造を説明するための「解剖学の模型」や、専門書なども、立派な経費です。
4-2-2-2. ヨガ・ピラティススタジオで、経費にできる意外なもの
レッスンで使う、Spotifyなどの音楽の利用料、空間を演出するためのアロマ、生徒さん用のヨガマットや、プロップス(補助具)の購入費用も、もちろん経費になります。
4-2-2-3. パーソナルトレーニングジムで、判断に迷う経費
これは、よく議論になる点です。トレーナー自身のトレーニング費用や、プロテイン代は、経費になるのでしょうか? 税務上の判断としては、「事業に、直接、必要か?」が、問われます。 一般的な体力維持のための費用は、経費として認められにくい傾向にあります。しかし、例えば、「ボディビル大会に出場し、その実績を、ジムの宣伝として活用する」といった、明確な事業目的がある場合の大会出場費などは、経費として認められる可能性が高いでしょう。
4-2-3. 自宅サロンの「家事按分」という、魔法の杖
自宅の一部を、事業で使っている場合、家賃や、水道光熱費、インターネット通信費の一部を、経費にすることができます。これを「家事按分(かじあんぶん)」と言います。 例えば、あなたの家の総面積が80㎡で、そのうち、施術で使うスペースが20㎡なら、面積比率は25%。家賃の25%を、経費として計上できる、という考え方です。
4-2-4. セミナー代、書籍代…「自己投資」は、最高の経費である
理学療法士や整体師としての、あなたの技術を高めるためのセミナー代や、書籍代。これらは、100%、経費です。 そして、これは、単なる経費ではありません。あなたの未来の「稼ぐ力」を、直接的に高めてくれる、最高の「自己投資」なのです。
4-3. 個人事業主のための“退職金制度”:最強の節税ツール3選
会社員にはあって、私たち独立開業者にはないもの。その一つが「退職金」です。 しかし、ご安心ください。国は、私たち個人事業主のために、掛け金が、全額、所得控除(所得から差し引ける)になる、素晴らしい“じぶん退職金制度”を用意してくれています。
4-3-1. 小規模企業共済:月々7万円まで、全額所得控除の“王様”
これは、個人事業主が、最初に検討すべき、節税の“王様”です。月々1,000円から70,000円までの範囲で、掛け金を設定でき、その全額が、あなたの所得から控除されます。
公式サイト: 中小機構 小規模企業共済 (https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/)
4-3-2. iDeCo(個人型確定拠出年金):自分の手で、未来の年金を育てながら、節税する
こちらも、掛け金が全額所得控除になる、私的年金制度です。個人事業主は、月々最大68,000円まで、拠出可能です。
公式サイト: iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会) (https://www.ideco-koushiki.jp/)
4-3-3. 経営セーフティ共済(倒産防止共済):取引先の万が一に備える“保険”的節税
これは、少し性質が異なりますが、取引先の倒産など、万が一の事態に備えながら、掛け金(最大、月20万円)を、全額経費にできる、非常に強力な制度です。
公式サイト: 中小機構 経営セーフティ共済 (https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/)
4-4. その他の、いますぐできる節税策
4-4-1. ふるさと納税:実質2000円で、豪華な返礼品と節税を
厳密には「節税」ではなく「税金の前払い」ですが、実質2,000円の自己負担で、日本中の素晴らしい返礼品を受け取れる、やらない理由がない制度です。
参考サイト: さとふる (https://www.satofull.jp/)、楽天ふるさと納税など
4-4-2. 青色事業専従者給与:家族に給料を払って、節税する
もし、あなたの配偶者や家族が、あなたの事業を、フルタイムで手伝ってくれているなら。その労働に見合った、適切な給料を支払うことで、その給料分を、全額経費にすることができます。
4-4-3. 法人化という選択肢:利益が800万円を超えたら、検討すべき次のステージ
あなたの所得(儲け)が、恒常的に800万円を超えるようになってきたら、個人事業主のままよりも、会社(法人)を設立した方が、税金面で、有利になる可能性があります。これは、あなたのビジネスが、次のステージに進んだ証です。
第四部:【確定申告の実践編】マネーフォワードで、悪夢を“1日の作業”に変える
これまでの章で、あなたは、開業の手続きを学び、税金の基本を理解し、そして、賢い節税の知恵を身につけました。 この第四部は、その一年間の集大成。 あなたの事業の「成績表」である、「確定申告」を、実際に、作成し、提出するための、完全な実践ガイドです。
「確定申告」と聞くだけで、蕁麻疹が出そうになる… 大丈夫。僕も、そうでした。 しかし、ご安心ください。この章を読み終える頃には、その恐怖は、完全に消え去っています。
5-1. なぜ、僕が会計ソフト「マネーフォワード クラウド確定申告」を、心から勧めるのか
僕の失敗談:最初の確定申告は、地獄だった
僕は、開業1年目、会計ソフトを使わずに、Excelだけで、確定申告に挑む、という、無謀な挑戦をしました。 結果、どうなったか。 一年分の、山のような領収書とにらめっこし、慣れない勘定科目に頭を悩ませ、複雑な計算式と、格闘する日々。 2月の、ほぼ全ての自由な時間を、この、苦痛な作業に費やしました。「僕は、一体、何をやっているんだろう…」 理学療法士や整体師としての、本来やるべき、お客様と向き合うためのエネルギーが、どんどん、奪われていきました。
その地獄の経験から、僕は、翌年、迷わず、クラウド会計ソフトを導入しました。 そして、僕が、数あるソフトの中から、「マネーフォワード クラウド確定申告」を選び、今も、心から、あなたにお勧めする理由は、シンプルです。
- 銀行口座や、クレジットカードと、全自動で連携してくれる (日々の入力作業が、ほぼゼロになります)
- スマホアプリが、驚くほど、使いやすい (レシートを、スマホで撮影するだけで、経費が記録されます)
- 確定申告のプロセスを、質問に答えるだけで、ナビゲートしてくれる (あなたは、税金の知識がゼロでも、迷うことがありません)
このソフトは、あなたの「経理」という、最も苦手な仕事を、月々わずか1000円程度で、完璧に代行してくれる、最高の“外部スタッフ”なのです。
5-2. 確定申告の、年間スケジュール(1月〜3月の、具体的な流れ)
まず、確定申告という「お祭り」の、全体像を把握しましょう。 焦らないための、年間のスケジュールです。
- 前年1月〜12月: マネーフォワードに、日々の売上と経費を、コツコツと記録しておく期間。
- 1月下旬〜2月上旬: 生命保険料の控除証明書など、必要な書類を、全て、一つのファイルに集める期間。
- 2月16日〜3月15日: いよいよ、確定申告書の「作成」と「提出」を行う、本番期間です。
- 〜3月15日: 所得税の納付期限。
- 〜3月31日: 消費税(課税事業者の場合)の納付期限。
5-3. マネーフォワードを使った、日々の“仕訳”作業の基本
確定申告を「1日の作業」で終わらせるための、たった一つの秘訣。 それは、「毎週1回、10分だけ、マネーフォワードと向き合う」という、小さな習慣です。
マネーフォワードは、あなたの銀行口座や、クレジットカードの明細を、自動で、取り込んでくれます。 あなたがやるべきは、その、取り込まれたデータが、何の費用だったのかを、カテゴリー分け(仕訳)してあげることだけ。 「この支出は、家賃だな」「これは、セミナー代だから、研修費だな」と。 この、週に一度の、たった10分の習慣が、翌年の2月のあなたを、地獄から救ってくれます。
5-4. 確定申告書を作成する、具体的なステップ
さあ、いよいよ、ラスボスである「確定申告書」の作成です。 しかし、マネーフォワードという、最強の武器を持つあなたなら、もう、何も恐れることはありません。
マネーフォワードは、「〇〇の金額を入力してください」と、あなたに、一つひとつ、質問をしてくれます。 あなたは、ただ、その質問に、正直に、答えていくだけ。 すると、あの、複雑怪奇に見えた確定申告書が、自動で、完璧に、完成するのです。
その具体的な手順は、僕がここで解説するよりも、公式や、専門家の、素晴らしい「動画」と「サイト」を見るのが、100倍、分かりやすいでしょう。
5-4-1. 参考動画:マネーフォワード公式チャンネルの、世界一分かりやすい解説
マネーフォワード社が、自ら、毎年、最新版の、非常に分かりやすい解説動画を、YouTubeで公開してくれています。(www.youtube.com/@Moneyforward)
5-4-2. 参考サイト:初心者でも、図解で分かる、確定申告のやり方
動画と合わせて、文字と、画像で、自分のペースで確認したい、という方には、以下のような、図解入りの解説サイトが、非常に参考になります。(ここに、freee** や、やよい などの、非常に分かりやすい確定申告解説ページのURLを設置)**
5-5. 税理士は、いつから頼むべきか?(契約の種類と、リアルな費用相場)
僕の経験談
僕は、開業1年目の確定申告を、自力で行い、地獄を見ました。「わけがわからなくて、本当に、大変だった」のです。 そして、僕は、2年目から、税理士の先生に、確定申告だけをお願いすることにしました。 それは、僕の起業人生で、最も賢明な「投資」の一つでした。
5-5-1. 契約の種類:「顧問契約」と「スポット契約(確定申告のみ)」の違い
- スポット契約: 確定申告の作業だけを、年一回、お願いする契約。独立したての、私たち個人事業主は、まずは、これで十分です。
- 顧問契約: 毎月、顧問料を支払い、日々の経理のチェックや、節税の相談など、年間を通して、あなたの経営をサポートしてもらう契約。
5-5-2. リアルな費用相場:
- スポット契約:5万円〜15万円程度
- 顧問契約:月額1万円〜3万円程度
が、個人事業主向けの、一般的な相場です。
5-5-3. 僕が、税理士と契約したタイミングと、その理由
僕が、2年目から、税理士の先生にお願いした理由。 それは、「僕の、1年で、最も貴重な“時間”と“精神力”を、たった数万円で、守れるなら、それは、あまりにも安い投資だ」と、気づいたからです。 私たち専門家の仕事は、自分の頭と、心と、身体が、資本です。 その資本を、苦手な作業で消耗させるくらいなら、その部分は、プロに、気持ちよく、お金を払って、任せてしまう。 これもまた、重要な「まったり経営術」の一つなのです。
終章:お金の知識は、あなたを“自由”にする、もう一つの翼
ここまで、本当にお疲れ様でした。 開業の届出、税金と社会保険料の複雑な仕組み、そして、あなたの資産を守るための、数々の節税の知恵。 もしかしたら、あなたは今、少しだけ、頭が疲れているかもしれませんね。
しかし、この長い、そして、時に難解な旅路を終えたあなたは、もう、かつてのあなたではありません。 あなたは、独立開業という、荒波の大海原を、羅針盤も、海図も持たずに、ただ、がむしゃらに漕ぎ出そうとしていた、無防備な冒険家ではないのです。
あなたの手の中には今、お金という、時に荒れ狂う「海」を、賢く、そして、安全に、航海するための、揺るぎない「知識」という名の、翼が、確かに、宿っているのですから。
6-1. 複雑なルールは、あなたを縛るためではなく、あなたを守るためにある
確定申告、青色申告、経費、所得控除…。 これらの、複雑で、面倒に見えるルールは、一体、何のために存在するのでしょうか。 それは、決して、私たち個人事業主を、縛り付けるためではありません。 むしろ、その逆です。
これらのルールは、誠実に、そして、真面目に、社会に価値を提供しようと奮闘する、あなたのような挑戦者を、理不尽なリスクから“守る”ために、先人たちが、長い年月をかけて、築き上げてきた、「防波堤」であり「盾」なのです。
- 「確定申告」というルールは、あなたが、社会的な信用を得て、より大きな融資を受けるための、「信頼の証明書」です。
- 「節税」というルールは、あなたが、汗と涙で稼いだ、尊い利益を、未来のあなたの「学び」や「安心」のために、賢く再投資することを、国が、公式に応援してくれている「エール」です。
- 「社会保険」というルールは、あなたが、万が一、病や怪我で倒れたとしても、「大丈夫、あなたの人生は、社会全体で支えるから」という、温かい「セーフティーネット」なのです。
お金の知識とは、あなたを縛る「鎖」ではありません。 それは、あなたを、そして、あなたの大切な家族を、未来のあらゆるリスクから守り、本当の「心の平穏」を与えてくれる、「黄金の羽」を構成する、もう一方の、力強い「翼」なのです。
6-2. このラボが、あなたの“経営”と“資産”の、伴走者でありたい理由
独立開業した、私たち理学療法士、整体師、ヨガ・ピラティスインストラクター、パーソナルトレーナーの旅は、一度きりの確定申告で、終わりではありません。 税金のルールは、毎年、少しずつ、変わっていきます。 あなたのビジネスが成長すれば、次のステージ(法人化など)の、新しいルールが、あなたの前に現れます。
その、終わりなき、しかし、あなたのビジネスを、より強く、より豊かにしていく、学びの旅路において。 この『未来設計ラボ』が、あなたの、信頼できる「伴走者」であり続けたいと、僕は、心から願っています。 僕自身も、あなたと共に、学び続け、そして、僕が手に入れた最新の「知恵」を、この場所で、あなたに、惜しみなく、分かち合い続けることを、約束します。
最後まで長い文章を読んでくださり、ありがとうございました^^
ーTatsu